2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K03385
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
池田 幸弘 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (80211720)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | オーストリア学派 / アダム・スミス / 分業論 / フリードリッヒ・リスト / カール・マルクス / カール・メンガー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の実績は大きく二つに分かれる。まずは、6月に開催されたイタリア経済思想史学会で、経済思想における分業論の系譜について報告した。これは、公刊を予定しているドイツ経済思想研究の序章的な位置づけを持つ研究である。古典派経済学の祖であるアダム・スミスの分業論の分析から始まり、フリードリッヒ・リストの分業理解、そしてスミス分業論の批判に至る。リストに従えば、スミスは分業の「協業」的側面を理解していないとされる。さらに、本研究では、カール・マルクスの『ドイツ・イデオロギー』をとりあげ、マルクスの分業理解、あるいは分業批判が、スミスやその批判者であるリストの見解を前提にしていることを明らかにした。学会では、討論者からコメントを頂戴したが、本研究プログラムを推進するのに有意義であったと考えている。 さらに、本年は小泉信三没後50年にあたり、福沢研究センター刊の『近代日本研究』に『小泉信三の筆記ノート 堀江帰一「財政学」筆記ノートを中心に』と題する論文を公刊した。この論文では、小泉信三が学生時代に履修した講義のなかから、とくに堀江帰一の財政学講義をとりあげ、その評価を行った。かつてわたくしは、ギャレット・ドロッパーズの財政学講義をとりあげ、講義とアドルフ・ワーグナーの経済思想との関係について言及したことがある。そのさい、ドロッパーズの講義がどのような影響を塾生に与えたかを課題として残した。本論文は、そのような課題に改めて答えようとしたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
すでに述べたように、学会報告や論文執筆によって、研究プログラムの推進をはかっている。しかし、本研究ブログラムの最終目的である欧文図書の刊行にはいたっていない。以下に、刊行を企図している図書の目次をあげる。 序章 第1章ロッシャーと古典派経済学 第2章ロッシャーの講義ノート 第3章ラウとロッシャー 第4章忘れ去られた経済学者、ゴッセン 第5章ドイツ歴史学派、サーヴェイ第6章1860年代のカール・メンガー 第7章メンガーの主観主義 第8章メンガーにおけるスミス受容 第9章メンガーの貨幣理論 第10章メンガーの経済的自由主義 第11章メンガーの『原理』改定: 失敗した試み 第12章ドイツ歴史学派が日本にやってきた 第13章ギャレット・ドロッパースとドイツ歴史学派 第14章小泉信三と欧米体験 エピローグ 以上のうち、序章、第12章、エピローグは執筆されていない。この部分を執筆して、公刊にこぎつけることが最終年度の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね、つぎのような順序で、研究プログラムを推進する予定である。まずは、欧文図書のTable of Contents (目次)、刊行の目的、タイトルなどを付して、欧米の出版社に刊行の意志を告げる。かなりの部分については、執筆済みであるので、Sample Chaptersの提示は容易である。査読結果によっては、書籍の中身について再検討を行う。出版社が定まれば、残された章について鋭意執筆を行い、刊行にこぎつける。本研究プログラムは本年度が最終年度となるので、このような順序で年度内の公刊を目指す。
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Research Products
(3 results)