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2015 Fiscal Year Research-status Report

ロシア革命再考:戦争・アナーキー・飢餓のなかの革命的社会主義の勝利と挫折

Research Project

Project/Area Number 15K03386
Research InstitutionRitsumeikan University

Principal Investigator

森岡 真史  立命館大学, 国際関係学部, 教授 (50257812)

Project Period (FY) 2015-04-01 – 2019-03-31
Keywords公務員のストライキ / 銀行国有化 / 金融資産の無効化 / 収奪者の収奪 / 集権的管理 / 担ぎ屋 / 私的商業 / 穀物徴発
Outline of Annual Research Achievements

本年度は,十月革命直後の,ソヴェト政府が社会主義経済の構築に向かう過程について,思想と状況の相互作用に焦点をあてて研究を行った。1917年秋の時点では,レーニンは,革命政府の課題は既存の資本主義的な経済管理機構を掌握し,それを労働者ソビエトの統制の下に置くことであると主張していた。その背景には,後進的なロシアが社会主義に移行する条件は,ドイツでの革命の勝利と結びついてはじめて生み出されるとの認識があった。ところが,ロシアの資本主義は革命から数ヶ月間に破壊され,代わって,経済的孤立の中で,国家による工業の集権的的管理および農村からの穀物徴発を基本的特徴とする最初の社会主義体制が構築される。
本研究は,社会主義へのこの意図せざる突進が,以下の要因の複合的帰結であることを明らかにした。①公務員らの2ヶ月以上にわたるストライキを制圧する非常手段として,民間銀行の占領・支配と金融資産の無効化を強行し,それを「収奪者の収奪」の具体化として事後的に正当化したこと。②対独講和後の「息つぎ」の時期における経済再建の試みにおいて,ドイツ戦時経済の理想視に基づき,経済合理性をもっぱら大工業技術や集権的管理の面から理解し,分散的・独立的な経済活動,とりわけ商業・金融活動の役割を認めなかったこと。③食糧不足や計画的な食糧供給の障害を非合法な零細な私的商人たる担ぎ屋の活動に求め,これを経済の組織性・計画性を掘り崩す存在とみなして排除をはかったため,穀物流通の媒介機構を失い,穀物調達をめぐって土地革命により均質化した農民と直接的な対立に陥ったこと。
以上の成果は,社会主義的政策の急速な導入が,公務員のストライキや担ぎ屋取引との闘争の帰結であることとと,闘争手段の選択にマルクス主義が強い影響を及ぼしたことの両面を関連づけてとらえてる点で,革命の歴史的・思想的理解に新たな光を投じる意義をもつものである。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

ソヴェト政府が当初の構想に反して社会主義経済の構築へと突き進んでいった基本的な原因を明らかにすることができたのは大きな成果であると考える。ただし,公務員のストライキに対して預金・貸金庫の統制や金融資産の破棄によって抵抗の経済的基礎の破壊をはかるという12月半ばの決定に,昂進しつつあったアナーキーがどのような影響を及ぼしていたのかという問題については,政策の転換が決断された時期(11月末~12月前半)が多くの兵士をまきこんだ泥酔暴動の最盛期にあたっていた事実を確認したものの,具体的な関連を示すことはできなかった。この点は2016年度に持ち越された課題である。また,研究対象も,時期の面では1918年春までの段階に,主体の面では,共産党・中央ソヴェト政府の指導者の動向に限定されている。この時期に確立したソヴェト経済体制の骨格が,内戦および農民の反乱が本格化する1918年夏以降にどのように発展を遂げ,形成された社会主義体制がマルクス主義思想にどのような反作用を及ぼしたか,ソヴェト政府に対抗する勢力がこの体制をどのように評価・批判したのかについても,2016年度にあわせて考察する予定である。

Strategy for Future Research Activity

2015年度に積み残した課題として,ネップ移行までのソヴェト体制の展開を,いわゆる「戦時共産主義」の時期と,ネップによる政策転換の時期に分けて,内戦に勝利した革命的社会主義が1921年移行に自由市場と私的商業の承認という(一時的な)敗北を蒙る過程を,思想と状況の相互作用に焦点をあてて明らかにする。思想の役割に関しては特に,マルクス主義や広義の社会主義に特徴的な経済学的な認識が政策の選択に及ぼした影響に注目する。さらに,当初の計画に沿って,(1)革命的社会主義諸派の間での分岐と対立は,どこまで状況・事実認識の相違に起因するものであり,どこまで思想それ自身あるいは思想が擁護する種々の価値規範の間の優先順位の相違に起因するものであるか。(2)ソビエト政府の諸政策,とりわけその食糧政策と治安政策は,どこまでが革命的社会主義の思想の直接的反映であり,どこまでが共通の困難への共通の対応という面をもつか,という問題の考察に取り組む。

Causes of Carryover

為替レートの変動(ルーブルの下落)などの事情により,ロシアへの調査出張の宿泊実費が当初の見込よりもかなり安くついたこと,および当初資料所蔵地への出張で入手を予定していた資料の一部をデジタルデータで購入できたことにより,計画との差額が生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

未消化分については,本年度予定しているロシアへの出張における資料の追加的な購入・複写およびこれらの資料の整理に関わる人件費・謝金に充当する。

  • Research Products

    (5 results)

All 2016 2015

All Journal Article (2 results) (of which Open Access: 2 results,  Acknowledgement Compliant: 1 results) Presentation (3 results)

  • [Journal Article] 初期ソヴェト経済政策における模索と選択:社会主義への意図せざる突進2016

    • Author(s)
      森岡真史
    • Journal Title

      立命館国際研究

      Volume: 第28巻3号 Pages: 17-48

    • Open Access / Acknowledgement Compliant
  • [Journal Article] 松尾匡『ケインズの逆襲 ハイエクの慧眼』2015

    • Author(s)
      森岡真史
    • Journal Title

      季刊経済理論

      Volume: 第52巻3号 Pages: 102-104

    • Open Access
  • [Presentation] 社会主義への意図せざる突進2016

    • Author(s)
      森岡真史
    • Organizer
      社会主義理論学会
    • Place of Presentation
      慶應義塾大学三田キャンパス(東京都港区)
    • Year and Date
      2016-04-24
  • [Presentation] 初期ソヴェト経済政策における模索と選択2016

    • Author(s)
      森岡真史
    • Organizer
      基礎経済学研究所
    • Place of Presentation
      名古屋学院大学さかえサテライト(愛知県名古屋市)
    • Year and Date
      2016-03-12
  • [Presentation] 十月革命における理想の変容――平和布告・土地布告・ソビエト政府をめぐって2015

    • Author(s)
      森岡真史
    • Organizer
      基礎経済科学研究所
    • Place of Presentation
      関西大学千里山キャンパス(大阪府吹田市)
    • Year and Date
      2015-08-29

URL: 

Published: 2017-01-06  

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