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2017 Fiscal Year Research-status Report

ロシア革命再考:戦争・アナーキー・飢餓のなかの革命的社会主義の勝利と挫折

Research Project

Project/Area Number 15K03386
Research InstitutionRitsumeikan University

Principal Investigator

森岡 真史  立命館大学, 国際関係学部, 教授 (50257812)

Project Period (FY) 2015-04-01 – 2019-03-31
Keywords社会主義 / ロシア革命 / マルクス主義 / 計画経済 / 資本主義 / ネップ / スターリン / ソ連
Outline of Annual Research Achievements

まず,ロシア十月革命の思想的根拠となったマルクスの社会主義論について,生産手段の私的所有の廃絶,市場の範囲と機能の限定,資本による労働者の支配の除去などの点で,その構想が可能な限りソ連で実現されたこと,この体制における理想と現実の乖離の根本的原因は構想それ自身にあることを,先駆的批判者による指摘とともに確認した。次に,十月革命とソ連社会主義の原型の形成について,共産党の権力獲得を可能にした一連の要因(武装蜂起,土地革命,労働者統制,講和の約束とその達成)が初期のソビエト政府に多くの困難をもたらしたこと,ソ連社会主義の骨格はこれらの困難への短期的対応としてとられた一連の政策(有産者の収奪,穀物徴発,工業国有化)が社会主義への前進として事後的に正当化されることにより形成されたこと,市場と貨幣の廃絶をめざす試みは国民経済の崩壊および民衆の抵抗により断念されネップへの転換に到ったことを明らかにした。さらに,革命期・スターリン期から後期への転換について,スターリン期までの体制が労働者・農民に革命の勝利や工業建設のための耐乏を求めたのに対して,フルシチョフ期以後のソ連では,社会主義の優位は豊かな生活の実現により実証されるという考え方への転換が生じ,国民による消費生活に関する不満や要求の表出が認められるようになったこと,またこの転換は,長期的には計画経済による豊かさの達成への確信を弱めたことを考察した。最後に,ロシア革命を起点とする20世紀社会主義の盛衰について,資本主義の打倒と新たな経済体制の樹立という点での成功,生産手段の私的所有および自由市場の否定を通じて資本主義を乗り越えるという点での失敗,意識的・計画的な設計の原理を社会システム全体に適用するうえでの限界の実証,国境をこえるグローバルな体制の構築という点での一定の成功と最終的な挫折という観点からの特徴づけを行った。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

2017年度の研究では,十月革命の歴史的再考に関わって,次の点で実質的な進展があった。第1は,社会主義体制に関してマルクスが『資本論』その他の著作で展開した構想とソ連社会主義の基本的特徴との関係,とりわけ,十月革命の具体的過程および初期のソビエト政府の諸政策における状況的要因と思想的要因の相互作用のより深い解明である。第2は,ソ連社会主義における個人的あるいは家族的な消費生活の豊かさに関する位置づけの変遷,とりわけ,革命および五カ年計画期における革命権力の防衛あるいは軍備増強・重工業清潔のための耐乏の呼びかけからポスト・スターリン期における国民の消費要求表出の承認への転換とその帰結への着目である。第3は,十月革命を起点として形成されたグローバルな社会経済体制としての社会主義の資本主義に対する一時的・部分的な勝利と最終的な敗北の原因,とりわけ,社会主義体制が,市場取引を狭い範囲に制限することの不可避的な結果として個人的自由を甚だしく制限しただけでなく,不足を慢性化する構造の下で,利便性・快適性・多様性を備えた豊かな消費生活を実現できなかったことの帰結についての考察である。これらの進展は,人々の日常生活にもたらした変化という角度からの革命およびその背後にある理論や思想の評価に関わって,重要な意義をもつと考えられる。以上の理由から,研究の進展はおおむね順調であると判断する。

Strategy for Future Research Activity

革命期からネップ期への転換過程において私的商業や資本主義的諸関係の部分的復活の承認がいかに行われたが,この承認がどこまで定着し,なぜ1927-28年に再び部分的に,つまり,貨幣や交換そのものは認めるが私的商業は認めないという形で撤回されたのか,市場取引の要素を組み込んだ計画経済という考え方はその後のソ連経済および経済理論の中でどのように展開を遂げたのかという問題について考察を行うことにより,ネップ期における革命的社会主義の一時的挫折および市場との一時的和解についての理解を深め,20世紀社会主義の経済体制とそれが及ぼした影響についての認識をより包括的なものとしたい。

Causes of Carryover

理由は,ロシアへの出張における交通費が当初の予定よりも安くついたこと,複写を予定していた図書資料の一部がインターネットで利用可能となったことによる。次年度においては,新たに必要となった資料の取り寄せ・購入・複写等に充当することを予定している。

  • Research Products

    (9 results)

All 2018 2017

All Journal Article (4 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (5 results) (of which Invited: 1 results)

  • [Journal Article] 『資本論』と社会主義:20世紀社会主義の経験から2018

    • Author(s)
      森岡真史
    • Journal Title

      経済科学通信

      Volume: 145 Pages: 31-37

  • [Journal Article] 後期ソ連における転換とその帰結:生活要求の承認と表出2018

    • Author(s)
      森岡真史
    • Journal Title

      比較体制研究

      Volume: 55(2) Pages: 印刷中

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 20世紀社会主義の勝利と敗北2018

    • Author(s)
      森岡真史
    • Journal Title

      比較経済体制研究

      Volume: 24 Pages: 印刷中

  • [Journal Article] ロシア革命における解放と抑圧2018

    • Author(s)
      森岡真史
    • Journal Title

      経済科学通信

      Volume: 146 Pages: 印刷中

  • [Presentation] 20世紀社会主義社会主義の勝利と敗北2017

    • Author(s)
      森岡真史
    • Organizer
      比較経済体制研究会第39回大会
    • Invited
  • [Presentation] 『資本論』と社会主義2017

    • Author(s)
      森岡真史
    • Organizer
      基礎経済科学研究所第41回研究大会
  • [Presentation] ロシア革命における解放と抑圧2017

    • Author(s)
      森岡真史
    • Organizer
      基礎経済科学研究所東京支部研究集会
  • [Presentation] 松戸報告をめぐって2017

    • Author(s)
      森岡真史
    • Organizer
      比較経済体制学会第57回全国大会
  • [Presentation] 経済システムの基本的要素としての売手-買手関係2017

    • Author(s)
      森岡真史
    • Organizer
      経済理論学会第65回全国大会

URL: 

Published: 2018-12-17  

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