2016 Fiscal Year Research-status Report
20世紀アメリカ経済思想における自由社会構想の系譜
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15K03388
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
佐藤 方宣 関西大学, 経済学部, 教授 (90286609)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナイト / ロールズ / 自由主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施計画で平成28年度に予定していた通り、本研究計画の目的である「20世紀アメリカ経済思想における自由社会構想の系譜」の検討のために、ナイトにおける市場経済評価と自由社会構想との内的関連の検討を進めた。とりわけ当該年度については、前年度の研究の進展で明らかになった、ナイトと政治哲学者ジョン・ロールズとの関係性に焦点を当てて研究を進めた。20世紀アメリカにおけるリベラルの代表者であるロールズの主著『正義論』(1971年)の核心部分であ「無知のヴェール」論や「デザート」論といった議論構成が、リベラル批判の代表者と見なされがちなナイトの思想の強い影響下にあることを解明した。また上記の関係性について吟味することを通じて、ナイト自身の自由主義構想の哲学的基礎についてさらに探求を深めることが出来た。以上の研究の進展については、以下に示す研究会や国際セミナーでの議論の機会を得ることが出来た。
・佐藤方宣「ロールズとナイト――『正義論』のなかのアメリカ経済思想」近代経済学史研究会、2016年10月1日(土)、関西学院大学・西宮上ケ原キャンパス。 ・佐藤方宣「Frank Knight on Self-Interest:Why ethics cannot be reduced to “glorified economics”?」利己心の系譜研究会、2016年11月12日(土)東京大学・本郷キャンパス。 ・佐藤方宣「ロールズとナイト」現代経済思想研究会、2016年12月3日(土)、下関市立大学。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先に「研究実績の概要」欄で記したとおり、平成28年度においては研究計画で予定していた「20世紀アメリカ経済思想における自由主義構想」の解明作業に関して、ナイトやロールズについての基礎的文献・資料の検討については計画通りないし発展的に研究を進めることが出来た。これにより先述のような20世紀アメリカ経済思想におけるリベラル派とリベラル批判の思想的内容とその対立の構図の思想史的理解について、一定の成果を得ることが出来た。 ただし残念ながら、当初の計画に照らして順調に進展しているとまでは主張しえない。 当初の研究計画における「研究方法と成果報告」の主要課題としては、(1)国際学会における研究報告と、(2)領域横断的な研究交流の拠点としての「現代経済思想研究会」の開催を通じた研究課題の学際的な検討を考えていたが、これらについて十分な取り組みが欠ける点が生じてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度については、平成27年度ならびに平成28年度の研究内容を発展的に継承し、また十分に取り組みえなかった課題もふまえて、(1)ナイトとハイエクにおける市場経済評価と自由社会構想との内的関連の検討、(2)ナイトとロールズとの思想的関係性の検討を行う中で、20世紀アメリカにおける自由社会構想の系譜におけるそれぞれの歴史的・現代的含意の明確化と、その成果発表を進めていくこととする。 とりわけ具体的には、引き続き本研究計画を通じてもっとも大きな課題の一つである、学術論文の国際雑誌への投稿、ならびに領域横断的な研究交流の拠点としての「現代経済思想研究会」の開催を通じた研究課題の学際的な検討を進めることとしたい。 。
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Causes of Carryover |
研究計画では予定していた国際学会での報告(アメリカのHistory of Economics Society,ヨーロッパのEuropean Society for History of Economic Thoughtなどを予定)が実現できず、そのための費用の支出が不要となった。また本研究計画にかかわる領域横断的な研究交流の拠点である「現代経済思想研究会」に関する交通費支出等が不要となった。 以上が主たる理由となり、研究費の支出の一部を次年度に廻すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額となったものとあわせて、経済思想の歴史的研究という本研究計画の趣旨から、思想史的研究の中心となる書籍・論文(テーマに関連する経済思想・倫理学・政治哲学関連書籍)の購入費として、800,000円の使用を予定している。また文具およびパソコン周辺消耗品として200,000円の使用を計画している。また各種学会・研究会などの出張のための費用として200,000円の使用を計画している。さらに国際学術誌への投稿論文作成のための英文校正費などとして100, 000円の支出を計画している。また資料複写費として100,000円の支出を計画している。以上を通じて、本研究計画の目的の達成を実現することとしたい。
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Research Products
(3 results)