2015 Fiscal Year Research-status Report
確率解析の手法を用いた統計的逐次解析の理論とその応用
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15K03395
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
永井 圭二 横浜国立大学, 国際社会科学研究院, 教授 (50311866)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 統計的逐次解析 / パネルデータ / オンライン検知・探索 / オンライン意思決定 / 早期検知・探索 / 早期意思決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、自然現象や経済現象において時間の経過に沿って観測される依存関係をもつデータに関して、時間の経過に沿って検知・探索・意思決定する手法、すなわちオンラインで検知・探索・意思決定を行う手法を確立する。このテーマが応用上重要なのは、時間にも横断面にも複雑な依存関係を有するデータつまりパネルデータをオンラインで観測する場合、時間軸の解析を可能にする統計的手法となりうる点にある。 オンラインで観測されるパネルデータに対し統計的意思決定を行う場合、重要な点は2つある。一つは早期検知・早期探索であり、自然や経済市場などの状態に対する早期の探索をおこなう点である。そして、もう一つは早期意思決定であり、自然や経済市場の状態を理解した後さまざまな意思決定を早期に行うという点である。 従来の統計学では離散時間で観測されるデータに対して、状態の検知・探索や意思決定にともなう時間の経過の関して十分な考慮がなされていなかった。たとえば、同じ状態を検知・探索する場合にしても時間が違えば効果が全く異なり、早い検知・探索をすることによるベネフィットと、遅い検知・探索をすることによるコストは、間違った検知・探索をしてしまうことのコストとともに、十分な吟味がなされなければならない。同様に、意思決定に関しても、同じ意思決定を行うにしても時間が違えば効果が全く異なり、正しい意思決定を早期にすることによるベネフィット、意思決定に遅れることおよび間違った意思決定をすることによるコストは、吟味されなければならない。 自然や経済市場におけるオンラインデータが利用可能な今日、本研究による統計的逐次解析の手法が現実的な意味を帯びる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で提案する統計的逐次解析による検定・変化点探索に関するOC は、離散時間モデルを連続時間モデルで近似したとき、ブラウン運動や拡散過程の汎関数の確率・期待値として表される。そのときそれらの値は、Bessel 過程で表現されることがある。その場合、特殊関数を用いて数値解析が可能であることがわかる。逐次解析による統計量は、離散時間モデルを連続時間モデルで近似されるとき伊藤過程で近似される。また帰無仮説に対する局所対立仮説の尤度比検定が、フィッシャー情報量で停止時刻を定めたとき、LANになっている場合、スコアに対する極限をスコア過程、フィッシャー情報量に対する極限をフィッシャー情報量過程と呼ぶと、スコア過程の二次変分がフィッシャー情報量過程となる。そこでフィッシャー情報量過程から作られる停止時刻で時間変更を行うと、問題はDDS ブラウン運動で表現されLAN がでてくる場合がある。もとのフィッシャー情報量過程やSPRT はともに時間変更後の新たなブラウン運動のもとで定義される別の拡散過程によって表現される。 今のところわかっているのは、一般的にそのような双対的な拡散過程があるわけではなく、いくつかの特殊な場合に存在するようである。たとえば、一階の自己回帰過程の極限であるOrnstein=Uhlenbeck 過程と、移民項のある分岐過程の極限であるCox=Ross=Ingersoll 過程ではどちらも、Bessel 過程がそのような双対的な拡散過程である。 初年度は、ADF 検定とセミパラメトリックな単位根検定の場合に単純なOU 過程で近似することが正しいことを示し、一般のマルコフ連鎖の伊藤過程による近似について研究した。この際、重要な事例に関しOC がどのように表現され数値解がどうなるか調べることにあるが、数値解析の手法がまだ良く分かっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度よび次年度は前年度に引き続いて離散時間従属的過程の伊藤過程による近似を考え逐次解析の研究を行う。理論部分については ① 最適性の問題 ② p次自己回帰過程の逐次単位根検定の停止時刻の期待値の解明 ③ 変化点探索 ④ 多次元分枝過程 に重点を置きたい。①の最適性の問題は連続時間モデルでいうとドリフト付きブラウン運動のドリフトパラメータの逐次検定の最適性が参考になる。単純仮説対単純仮説の検定であるSPRT については、最適性はすでに求められているが、複合仮説を対立仮説とする逐次検定の方法がどのような意味で最適性を持つのかまだきちんと調べられていない。②のp次の自己回帰過程の逐次検定については検定統計量の漸近正規性が求められているが、停止時刻の期待値を近似する方法はまだ求められていない。③変化の問題であるが、停止時刻を用いた変化点探索では、連続時間モデルでいうとドリフトの変化の問題である。さまざまな現象をオンラインで観測するとき、パラメータが観測の途中で変化することをできる限り早く見極めることは極めてい重要である。理論的研究でShiryayev によりブラウン運動のドリフトの逐次的変化点探索問題を考えられているが、本研究の場合この問題はOU 過程の自己回帰係数の変化点の問題となる。定式化はそれほど難しくないが、OC の計算は困難な問題を伴う。この数値計算の問題を解決したい。④の多次元分枝過程についてはまず2 次元の場合で2 つの臨界パラメータの間に線形関係がある場合を考える。この問題の定式化はすでに行っているが数値計算などに結びつく具体的な解析的表現をまだ得ていないので、是非とも解明したい。
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