2016 Fiscal Year Research-status Report
高頻度データを用いた下方リスクの測定とリスクマネジメントへの応用研究
Project/Area Number |
15K03397
|
Research Institution | Kushiro Public University of Economics |
Principal Investigator |
生方 雅人 釧路公立大学, 経済学部, 准教授 (00467507)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 下方リスク / ジャンプリスク / オプション取引 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度では研究テーマのキーワードである下方リスクを測定する研究の新たな試みとして、資本市場が近い将来に金融資産価格に大きなジャンプが起こりうるリスクをどのくらい評価しているのかを測定する研究を開始した。具体的には、株価指数オプションのような日本においても盛んに取引が行われているデータに注目し、近い将来の満期で原資産価格を売買する権利を取引するオプション価格の内、アウト・オブ・ザ・マネーと呼ばれる権利行使価格と先物価格が大きく離れているオプションの価格情報を使って下方リスクを推計する研究である。こうした研究の理論的発展は米国の研究においても比較的新しく、オプション価格を用いて将来の下方リスクを推計する研究は日本においては依然として考えられていない。 本研究は米国の研究成果を日本の証券市場向けに応用するために幾つかの工夫をおこない、日経225株価指数を原資産とするオプション取引から示唆されるジャンプリスクの推計を行った。2006年1月から2014年8月までを標本期間とした推計の結果、日本独自と考えられるジャンプリスクの大きな動きが確認された。リーマン・ショックを端に発する金融危機や2011年の世界同時株安に代表される国内外の金融市場に広く影響を及ぼす出来事の直後に比較的長い期間でジャンプリスクは急激に上昇するのに加えて、さらに日本では2011年の東日本大震災と2013年半ばのアベノミクス不安が顕在化した時期に市場が下方ジャンプリスクを大きく見積もっていることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の8月までに通しておこなったノースウェスタン大学での在外研究では、下方リスクの測定に関する研究に多くの時間を費やすことが出来た。また、そうした分野で多くの研究業績をもつ教授の下で研究発表や意見交換をおこなうことができた。日本に帰国後も継続的なやり取りをおこなっており、日本の株式市場における下方リスクの測定に関して細部に至るところまで慎重に議論を進めることができ、いくつかの新しい知見を得ることが出来た。こうして本研究は順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
主に下記の2点について研究を進めていく予定である。第一に、平成27年度の下方リスクを考慮した最適ヘッジ戦略の研究成果は現在論文として取りまとめた後、海外の査読付き学術誌に投稿中であるので、出版に向けて改訂作業等をおこなっていく予定である。第二に、平成28年度から推計を試みている新たな下方リスク指標を使って、日本の下方リスクが国外の下方リスクとどのように関連しているのかを比較検証していく予定である。具体的には、米国や欧州の株価指数オプションのデータを用いて下方リスクを計測し、日本における下方リスクの連動性や独自性を慎重に探っていく予定である。
|
Research Products
(3 results)