2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K03398
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
村田 啓子 首都大学東京, 社会科学研究科, 教授 (90526443)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 恒常所得-ライフサイクル仮説 / 日本 / 消費・貯蓄 / 高齢世帯 / 遺産動機 / 資産 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.独立行政法人「経済産業研究所」より利用許可されたJSTARを用いて研究に必要なパネルデータベースを構築した。本データベースは情報量も多く優れているものの初めて利用する研究者にとっては変数名等が複雑でありデータベース構築には当初の想定を上回る時間と労力を要したが、所得、消費、世帯属性(家族構成や就業状況、過去の履歴等)、遺産動機等関連する変数についてのデータベース構築(初期2回分)を概ね終了させ、推計作業に移行することができた。並行して「家計調査」個票により、高齢世帯の資産保有(取り崩しの程度)と消費・貯蓄の特徴について、ライフサイクル=恒常所得仮説を基本とした視点からの検討を行った。 2.日本における相続財産の(不均等)分割データ(個票)を用いて、貯蓄行動とも家計の深い親の遺産動機の解明を試みた。特に、最初の親が死んだ際の相続(1次相続)と、もう一人の親が亡くなった際の相続(2次相続)を比較することで、親の遺産動機や相続に影響している日本の伝統的家族観の役割等を検討した。日本で見られる相続財産の不均等分割パターンは、1次相続にせよ、2次相続の場合にせよ、既存研究で提起された種々の遺産動機仮説と概ね整合的だが、取り分け、王朝的動機や戦略的動機は生き残った親が相続分割に関与できる1次相続時においてより顕著に観察できた。一方、利他的動機のモデルから予想されるような、経済的に恵まれない子に多くを遺すというパターンは明瞭には検出できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
JSTARを用いたデータベース作成には当初予定以上の多大な時間と労力を要したが、データベース構築を概ね終え推計作業に移行することができたほか、遺産相続分割論文についてディスカッションペーパーを公表できた。
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Strategy for Future Research Activity |
JSTARデータを用いて構築したデータべ―ス等により高齢世帯行動の分析を進める。結果についてはセミナー、学会等で報告、議論の後に論文を学術雑誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
研究打ち合わせや意見交換などを東京で行うことが可能となる機会が多かったこと、推計準備作業や推計作業等を自ら行ったことにより、旅費、人件費、謝金などが節約できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果を高めるためソフトウエア等物品の購入、学会発表や打ち合わせの旅費、人件費などに充当する予定である。
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