2017 Fiscal Year Annual Research Report
Saving behaviors of Elderly in Japan
Project/Area Number |
15K03398
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
村田 啓子 首都大学東京, 社会科学研究科, 教授 (90526443)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 恒常所得-ライフサイクル仮説 / 遺産動機 / 予備的貯蓄 / 高齢世帯 / パネルデータ / 日本 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.日本の高齢世帯の貯蓄取り崩し行動について、2種類のミクロデータを補完的に活用し実証研究を行い、論文としてとりまとめ公表した。まず、総務省「家計調査」個票から構築したデータセット(1984年~2012年、2000年以前は「貯蓄動向調査」の資産データともマッチングして構築)によると、高齢世帯の平均貯蓄率は負で恒常所得―ライフサイクル仮説(LC/PIH)と整合的であるが、より詳細にみると高齢世帯の貯蓄率は年齢により異なり、その形状はU字型を示し世帯主が高齢になるにつれ再びゼロに近づく。資産取崩しのスピードは 先行研究でもみられたように単純なLC/PIHと比べ緩慢であり、さらに実物資産を考慮した場合でも同様である。 次に、高齢者世帯の資産取り崩しが緩慢な要因について考察するため、家計調査からは得られない情報も有する「JSTAR(くらしと健康の調査)」(経済産業研究所、一橋大学、東京大学)の高齢世帯 のパネルデータ(2007年~2011年)により、どのような高齢世帯で貯蓄率が高いか(及び資産取り崩しが緩慢か)を分析した。遺産動機の有無により差がみられる(遺産動機のある世帯では貯蓄取り崩し速度が遅い)可能性がある一方 で、予備的貯蓄動機による影響については、遺産を残す予定のない高齢者世帯において差がみられる可能性が示唆された。 2.昨年度ディスカッションペーパーとして公表した親の遺産動機の解明を試みた論文”Intra-family Division of Inherited Property: Empirical Evidence from a Survey on Japanese Households”(Hamaaki, J., Hori, M.との共著)について、結論は変わらなかったものの、さらに理論モデルの検討及び実証研究の改訂を加えた後、国際学術論文に投稿した。
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