2017 Fiscal Year Research-status Report
家計の資産選択や労働供給に関する政策評価のためのミクロシミュレーション分析
Project/Area Number |
15K03399
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
伊藤 伸介 中央大学, 経済学部, 教授 (90363316)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林田 実 北九州市立大学, 経済学部, 教授 (20198873)
村田 磨理子 公益財団法人統計情報研究開発センター, その他部局等, 研究員 (20443319)
出島 敬久 上智大学, 経済学部, 教授 (70286756)
佐藤 慶一 専修大学, ネットワーク情報学部, 准教授 (90424192)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ミクロシミュレーション / ミクロ計量分析 / 公的統計ミクロデータ / 労働供給 / 資産選択 / 政策評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、雇用政策に対する政策分析や税制・社会保障に関する政策評価を行うために、政府統計ミクロデータを用いたミクロ計量分析に基づき、労働供給と資産選択を中心としたミクロシミュレーションモデルを構築するだけでなく、ミクロシミュレーション分析によって、労働供給に及ぼす配偶者控除の影響および資産選択に及ぼすキャピタルゲイン課税の影響を明らかにし、保健衛生等の分野への政策評価の展開可能性を探っていくことである。平成29年度の研究においては、ミクロシミュレーションを行うためのサブモデルの構築のために、「全国消費実態調査」の個票データを用いて、金融資産や住宅・宅地資産等の家計の資産が就業選択に及ぼす影響に関する実証分析を行った。本分析によれば、就業にリスク資産や実物資産が与える影響については、就業を有意に抑制することが実証的に確認された。このことは、家計資産の蓄積が非就業を誘導する理論的な可能性を示唆している。また、地域によって金融資産や実物資産が就業に及ぼす影響は異なっていることから、地域における住宅・土地の評価額の差が反映している可能性が考えられる。その一方で、公的統計のミクロデータを用いて、ライフイベントを考慮した動態的なミクロシミュレーションモデル(Dynamic Simulation Model)の作成可能性を追究するために、国民生活基礎調査の匿名データを用いて、家族構造を反映した初期母集団を設定し、出生、死亡、結婚、離婚といったミクロレベルの人口社会事象を反映したミクロシミュレーションモデルを構築した上で、人口数と世帯構成に関する将来予測を行うだけでなく、女性の労働力人口の予測等、ミクロシミュレーションモデルの適用可能性の模索を行った。本研究の成果については、2017年度統計関連学会連合大会(於: 南山大学)や経済統計学会第61回全国研究大会(於: 法政大学)で研究発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度の研究は、政策ミクロシミュレーションモデルを用いて、年金制度や配偶者控除の変化が労働供給や雇用形態に及ぼす影響さらには税制改革が資産選択に及ぼす影響を検証するために、シミュレーション分析を行い、わが国におけるミクロシミュレーションモデルの構築可能性について研究のまとめを行うことである。平成29年度においては、一部のミクロサブモデルの作成とモデルの精密化、さらにはミクロシミュレーションモデルの構築とその応用可能性を追究した。しかしながら、ミクロシミュレーションモデルの構築をさらに展開する上で、家族構成を反映した初期母集団データの作成やミクロサブモデルの推定を当初の予定ほど十分に進めることができなかった。したがって、現在までの進捗状況は、平成29年度の研究計画と比べるとやや遅れていると言える。そこで、本研究に関しては、平成30年度までの研究の延長を申請し、本研究をもう1年延長することが認められた。平成30年度においては、ミクロデータ分析とミクロシミュレーション構築のための作業、さらにはミクロシミュレーションにおける政策評価を行い、研究成果の取りまとめを行いたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度では、公的統計ミクロデータを用いて雇用政策や税制・社会保障制度における政策評価のためのミクロシミュレーションモデルを用いて、主として、年金制度の変化が労働供給や雇用形態に及ぼす影響を検証するために、シミュレーション分析を行い、わが国におけるミクロシミュレーションモデルの構築可能性について研究のまとめを行う。具体的には、大学の紀要や学会誌、学会や研究会での報告という形で研究成果の発表を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
【次年度使用額が生じた理由】 平成29年度においては、当初予定していた消耗品の購入や国内旅費の支出、さらにはプログラミングやデータチェックの業者への委託に関する謝金への支出が少なかったために、支出予定の研究費から残金が発生した。これについては、平成30年度に併せて支出する予定である。 【使用計画】 平成30年度の研究では、物品費、旅費や謝金を中心に支出を行う。「物品費」については、ミクロシミュレーションを実施するためのソフトウェアやパソコン周辺機器等の購入を予定している。「旅費」については、経済統計学会全国研究大会における研究成果発表に伴う国内旅費を中心に計画している。また、「謝金」に関しては、国内および海外において蒐集された資料の整理、およびミクロシミュレーションモデルのためのプログラミングやデータチェックの委託に関する謝金を予定している。なお、「その他」の経費は、文献資料のコピーに必要な複写費、関係者に論文を送付するための切手代を含む通信費、および学会での研究報告のために必要な学会参加費を含む。
|
Research Products
(20 results)