2015 Fiscal Year Research-status Report
生産性の識別と推定のためのミクロ計量理論とその応用
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15K03407
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Research Institution | Research Institute of Economy, Trade and Industry |
Principal Investigator |
小西 葉子 独立行政法人経済産業研究所, 研究グループ, 上席研究員 (70432060)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | サービス産業 / 小売業 / 生産性 / 効率性 / 経済モデル / 計量モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトでは、サービス産業の生産性の計測を行うことを目的としている。サービス産業は近年、GDPの7割を占め、経済活動にとっても労働市場の大きさからも非常に重要な業種であるが、データ入手の困難さや主要産業と認識されなかった経緯から先行研究は稀少である。ここでは、サービス産業の各業種の付加価値の源泉を明らかにした上で生産性計測モデルを構築し、大規模マイクロデータを用いた統計解析を行う。 本年度は、小売業に特化して、生産性に関する研究を行った。小売業は物を作る産業ではないため、その技術を計測するためには、効率性の指標を新しく作る必要がある。 そこで、本研究では、理論モデルにおいて、完全競争市場を仮定し、小売業の費用関数と生産者の利潤関数を定式化し、均衡における最適供給量と価格を導出する。小売業は幅広い商品を扱っているため、供給関数が弾力的な場合と非弾力的な場合に分けて経済モデルを作成した。 本年度は、そのうち青果、海産物、畜産物などの、供給関数が非弾力的な財を販売する小売業については実証研究も行った。具体的には、まず、費用関数を定式化し、効率性を識別した上で、2008年1月から2014年12月までの野菜の卸売価格と取引量、小売価格の地域レベルの月次パネルデータを用いて、小売業の効率性の計測を行った。これにより、地域間および時系列方向への効率性の比較を行うことが可能となる。実証結果より期間中の小売業の効率性(野菜を売る技術)は安定的に推移していることがわかった。この結果をまとめて論文として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトでは、サービス産業の生産性や技術を計測するための新たな理論や指標を開発し、その実証研究を行っていくことを目的としている。対象としている業種は、小売業、運輸業、宿泊業などであるが、本年度はそのうち小売業の財の種類別の費用関数の特定化を行うことができた。さらに供給関数が非弾力的な(生鮮食料品など)を販売する小売業については、実証研究も行った。運輸業、宿泊業などについても、研究に必要な公的統計調査の個票データの入手が終っており、おおむね順調に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降は、随時、研究結果の公表を論文投稿や学会などでの報告により行っていく。また、小売業以外のサービス業種についての研究を行っていく。この分野は、業種ごとに新しく経済モデルを作り、指標を作っていかなければいけないところもあり、同分野を研究している研究者や現場との交流を行いながら、研究を推進していく予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた国際シンポジウムへの参加とソフトウェアの保守サービスを翌年度に行うことになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度の助成金申請の計画遂行に加えて、国際シンポジウムへの参加とソフトウェアの保守、アップグレード、また書籍の購入を追加で行う。
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