2015 Fiscal Year Research-status Report
グローバル都市バンコクの階層構造と空間再編に関する実証研究
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15K03416
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
遠藤 環 埼玉大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (30452288)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地域経済学 / 都市 / インフォーマル経済 / 階層 / タイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、グローバル都市バンコク(タイ)に注目し、都市のダイナミズム、内部構造と階層性を理論的、実証的に明らかにすることが目的である。バンコクは、国際的分業の生産拠点、アジア地域のハブとして中枢管理機能を担いながら発展してきたが、一方で、様々な都市問題にも直面している。本研究では、第1に、バンコクにおける階層構造の実態とその歴史的変化を、時間軸と空間軸を念頭に置きながら明らかにする。第2に、中間層や都市下層の社会的上昇の有無、その経路に関して、拡大しつつあるインフォーマリティ(Informality)の動向にも留意しながら、分析する。実証研究を通じて、拡大する経済格差や政治的対立の原因の解明、格差是正への道筋や新しい都市モデルの模索といった、今後の理論・政策的研究へとつなげる予定である。 平成27年度は、マクロ分析(都市の内部構造、階層分析)、および地理的・空間的再編の動向に関する分析に着手した。具体的には、バンコク、および周辺に形成されているメガリージョンの機能と特徴、またバンコク内の階層構造を、各種マクロ統計、人口センサスなどを用いて分析した。明らかになったのは次の点である。第1に、かつて長年に渡って実施された地方への主要産業の分散化政策にもかかわらず、タイは顕著にバンコクと、その周辺地域に形成されたメガリージョンを中心に、国際的な生産ネットワークに結びつく形で発展してきた。メガリージョン(バンコク、および周辺11県)では、現在でも地域総生産の約70%が創出されている。第2に、バンコク内部は、中枢管理機能やサービスが強化され、グローバルな結節点としての機能が強化されつつある。また都市内格差が拡大しつつある現状が明らかになった(成果は、『地域経済学研究』にて近刊)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、グローバル都市バンコクの階層構造を理解するための準備段階として、各種マクロ統計を用いた分析を行った。人口センサスや地域経済に関する統計から主に1990年代以降の変化を明らかにした。1960年代以降の歴史的変遷については、概観したに留まったため、今後再検討予定である。また、バンコク内部の分析に関しては、所得階層などの分析が主になったが、労働市場の特徴や都市人口の動態をより把握する必要がある。個票の分析の可能性とあわせて、引き続き検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、引き続き、バンコクの階層構造、グローバルな都市を動かす諸力に関する分析を深めると同時に、都市内の機能の地理的分布、空間的特徴を明らかにするための調査、資料収集や聞き取りを行う予定である。第1に、バンコク都内、周辺県の地域別機能(経済・社会)と立地条件を明らかにする。第2に、ジェントリフィケーションや再開発プロジェクトの動向を統計と現地調査を組み合わせながら検討する。第3には、これらの都市空間の機能とその再編の実態をふまえながら、空間を巡る競争と階層対立が露呈している事例に関して、準備調査に着手する。
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Causes of Carryover |
454円という金額であり購入可能なものに制約があった。特に早急に必要な文房具などはなかったため、繰り越して有効に使用したいと考えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の調査、必要な物品などの経費の一部として使用予定。
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