2015 Fiscal Year Research-status Report
イノベーション創出のための公共政策の革新:フィンランド「需要主導型政策」の研究
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15K03426
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
徳丸 宜穂 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00387656)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 経済政策 / イノベーション政策 / 比較制度論 / 北ヨーロッパ |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度に当たる今年度は,本格的な調査研究の準備として,次のことを行った. (1)聞き取り調査・アンケート調査の作業仮説を構築するために,先行研究の検討を行った.(2)聞き取り調査・アンケート調査の問題設定を明確化するために,欧州委員会のイノベーション政策担当部局,およびフィンランドの政府機関(雇用経済省,フィンランド技術庁,財務省ほか)への聞き取り調査と情報収集を行った.同時に,イノベーション政策を研究する現地研究者(ヘルシンキ大学,トゥルク大学,国立技術研究所)と議論し,事実解釈の確認を行った.(3)アンケート調査の実施について,実査を委託するStatistics Finlandの担当官と初回の打合せを行った.
以上の結果,次のような知見を得ることができた. (1)「需要主導型イノベーション政策」実施の北欧的特質として,政府でも民間企業でもない諸中間組織の役割に着目する必要があることを確認できた.すなわち,イノベーション政策を,政府と民間企業の関係としてとらえる通念によっては北欧の実態に接近できないことが分かり,調査票設計にとって極めて重要な知見となった.(2)欧州委員会及びフィンランドにおける,イノベーション政策の動向と,特に需要主導型政策の今後の見通しを得ることができた.特に,緊縮財政が続くEUおよびフィンランドであるにもかかわらず,需要主導型政策はあまり予算がかからない政策であるため,重視され続けるという展望を確認できたことは重要である.(3)Statistics Finlandでは,実査体制でも予算面でも,調査を確実に遂行しうることを確認できたことも,大きな収穫である.(4)聞き取り調査の対象都市として,タンペレ市の都市開発が適切であるとの教示を,政策所管政府機関から得ることができた.タンペレ市の担当者の紹介も得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ予定通りの予備的聞き取り調査を行いえたし,また,アンケート調査の実査体制を予定よりも早く確保できたためである.
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度の方針としては以下の通りである. (1)政策所管政府機関から紹介を得た,タンペレ市の事例の聞き取り調査を進める.これまでと同様に,開発に参画しているすべての組織に聞き取り調査を実施する. (2)注目すべき点として浮上した,諸中間組織への聞き取り調査を実施する.その例は,地方自治体の公共調達を支援するNPOであるMOTIVA, Owal Group, Kuntaliittoなどである. (3)Statistics Finlandとの,アンケート調査の技術的な打合せを継続する.例えば,調査対象者の定義や,サンプリング方法についてである.
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Causes of Carryover |
政府機関への聞き取り調査の場で,オウル及びヴァーサの現地調査が不要だと分かり,その分の滞在費,交通費を支出しなかったためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
タンペレおよびユヴァスキュラの現地調査での滞在費,交通費として支出する予定である.
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Remarks |
当該ページの「研究紹介」「ブログ」で,成果の一部と関連成果を一般市民に公開する.
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