2015 Fiscal Year Research-status Report
ロシアの客観的・主観的厚生の格差に関するミクロ計量分析
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15K03437
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
武田 友加 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (70376573)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 不平等 / 貧困 / 労働市場 / 社会保障 / 健康 / ロシア / 中央アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,世界的に,格差は是正すべき問題であるという認識が高まっており,また,実証研究においても,経済成長と格差の関係を示したKuznetsの逆U字仮説の妥当性を疑問視する結果が報告されている。このような国際的・学術的関心を背景として,本研究では,市場経済への移行の中で急激に不平等が高まったロシアを事例とし,その是正策を探るべく,不平等のメカニズムを多角的に分析することを試みている。 平成27年度は,本研究に関連する文献調査を行うと同時に,ミクロデータのデータクリーニングおよび客観的厚生格差要因の試論的分析を中心に研究を進めた。研究成果の主なものは,第一に,ロシアの客観的貧困のプロファイルの変容と生活保護政策に関するものである。ここでは,実証分析に基づきロシアの貧困プロファイルを示すと同時に,ロシアの国家生活扶助法の特徴を示し,移行不況期と経済成長期のいずれの時期においても,貧困層のターゲティングに失敗していることを明らかにした。第二に,ロシアの貧困・不平等の特徴を浮き彫りにするために,旧ソ連諸国である中央アジア諸国の貧困および社会保護制度に関する研究を実施した。この分析から,中央アジア諸国ではロシアと比べて相対的に格差が小さく,経済成長が包括的成長であることが示され,また,社会保護制度はロシアと同様にソ連的名残りのある制度を形成している国もあれば,コミュニティに基づく制度を形成している国もあることが示された。第三に,ロシアの非正規雇用と主観的厚生および精神的健康の因果関係に関する研究を実施した。以上の中間的なものも含める研究成果を,学術誌および図書において公表すると同時に,ICCEES (International Council for Central and East European Studies)などの国際学会の他,国内における研究会において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果の一部を,国内外の学会・研究会において報告した他,学術誌や図書においても論文を公表あるいは公表が確定している。以上の点から,本研究は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,平成27年度に行った試論的分析の精緻化と分析モデルの完成を目指す。それに加え,引き続き,文献調査,データクリーニング,主観的厚生の試論的分析を適宜行う。また,平成28年度も,現地感覚と実証分析の結果にずれがないかどうかを調べるために,ロシアへの出張も実施する。
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Causes of Carryover |
購入予定であった書籍の支払い手続きが年度をまたいで行われる可能性があったため,支出を取りやめた。その結果,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
購入予定であった書籍購入のために使用する。
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Research Products
(4 results)