2015 Fiscal Year Research-status Report
複数のDSGEモデルのモデル結合による金融財政政策効果の予測法の改善
Project/Area Number |
15K03439
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
飯星 博邦 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (90381441)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ニューケインジアンモデル / モデル結合 / ゼロ金利制約 / 予測分布 / 金融摩擦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究計画の4つの全フェーズについてその一部の研究を遂行した。フェーズ1では、線形のニューケインジアンDSGEモデルに「金融摩擦」を導入し、これの有無で日本マクロ経済(特にバブル期とその崩壊期を焦点にあてて)の予測分布がどのような相違があるか比較した。金融摩擦を導入することで投資変動の予測精度の向上がこの研究から示すことができた。フェーズ2では、上の1で利用した2つのモデルの統合法として、(1)固定ウエイト、(2)マルコフスイッチウエイト、(3)時間的可変ウエイトの3つの手法を試行した。それぞれの手法でどの程度の予測精度が向上するかを数値的に計算し、(3)の手法が良いことを示した。フェーズ3では、新たなモデル結合法として、既存のDSGE-VARアプローチ法を拡張した。従来の手法では1つのDSGEモデルのみを事前分布として組み込んでいたが、これを複数のDSGEモデルまで拡張し、これによりVARモデルの周辺尤度が改善することを示した。フェーズ4では、非線形DSGEモデルの代表格であるゼロ金利制約モデルについて、粒子フィルタとプロジェクション法を併用し日本の過去30年のマクロ経済について、日本で初めて推定した。非線形モデルの解法について、線形DSGEで利用されていた従来の手法(ブランチャード・カーン法等)が利用できず、99年以降のゼロ金利下の日本経済ではちゃんと推定できていなかった。今回、新しい2つの手法とスーパーコンピュータを利用することで可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、4つのフェーズから構成されており、初年度である本年度では各フェーズについて、それぞれ研究成果を出すことができた。特に、フェーズ4は本年度の計画に該当しなかった事項である。これは、本年度が研究担当者がサバティカル期間であり、これを利用して米国の大学へ客員研究員として赴任したことにより得られた成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に基づき、4つのフェーズを進めていく。特に難問であったフェーズ4の非線形モデルの推定を初年度で終えたことにより、次年度以降の研究の進捗は容易くなったものと推察される。 フェーズ1では、現行の2つのDSGEモデルに小国開放モデルや労働摩擦の2つのモデルを追加する。フェーズ2では、4つのDSGEモデルをモデル結合できる手法の開発を進める。
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