2016 Fiscal Year Research-status Report
途上国における稲作栽培技術の普及メカニズム:経済実験のパネルデータ分析
Project/Area Number |
15K03446
|
Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
中村 和敏 長崎県立大学, 地域創造学部, 准教授 (40304084)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | インドネシア / 稲作 / 危険回避度 / 技術選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新しい稲作技術の導入が急速に進むインドネシアにおいて、農家の技術選択がどのような要因によって影響を受けるのかを明らかにするものである。平成28年度は、インドネシアの西ジャワ州スカブミ県の調査地において、前年度までに実施したリスク回避度や損失回避度に関する経済実験に関する分析を行った。 分析データを得るための経済実験では、Tanaka et al.(2010)で考案された手法(ベトナムで実施)を、高篠他(2014)と同様にインドネシアでの調査用に修正し、それを約100家計の農家世帯主に対して適用した。また、より詳細な分析を行うため、これら農家世帯主に対して、経済実験だけでなく、家計の属性や農業生産などについてのアンケート調査(所要時間30分間程度)も実施した。 分析の重要な目的の一つは、期待効用理論と行動経済学が想定するプロスペクト理論のいずれが妥当しているのかを明らかにすることであったが、本研究の調査結果からは、期待効用理論ではなく、プロスペクト理論が支持されるという結論が得られている。なお、この分析結果については、内容を取りまとめ、公刊論文として発表した。 また、これら上記の調査とは別に、技術選択に影響を与えると予想される農家の属性を明らかにするために、農業技術普及員に対して、農家の経営能力等の評価を依頼した。平成29年5月に、その農家評価作業が完了したとの報告を受けたので、現在はその回収のための準備を行っているところである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ヒアリング調査だけではなく、アンケート調査や経済実験を実施することになっているが、それらのなかでも経済実験による調査が重要な意味を持っている。これまで二度にわたる経済実験を実施し、実験データのパネルデータ化を無事に完了させることができた。こうしたことから、上記の評価区分が適当であると考えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成29年度は、これまでの経済実験で得られたデータから、リスク回避度や損失回避度を定量化し、これらにヒアリング調査やアンケート調査によって収集された情報を加えて分析し、新技術導入の決定要因を明らかにする予定である。また、必要に応じて、不足する情報を補うためのフォローアップ調査を実施する。
|
Causes of Carryover |
農業普及員による農家評価を実施・回収するのが、次年度に変更されたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度5月に、農業普及員による農家評価が完了したため、それらを業者に委託して回収する予定である。
|
Research Products
(5 results)