2016 Fiscal Year Research-status Report
複数均衡モデルを基礎とした震災後の長期経済動学の考察
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15K03448
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
細谷 圭 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (40405890)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 復興プロセス / 複数長期均衡 / 期待のコーディネーション / 均衡間格差の縮小 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,東日本大震災からの経済復興について,マクロ動学モデル分析と付随する数値解析を用いてアプローチするものである。復興プロセスにおける経済政策の内容とその作用の仕方によって,地域マクロ経済の長期均衡がだいぶ異なったものになる可能性があるのではないか,というのが本研究の着眼点である。被災地域経済の長期均衡を分析するにあたり,ロバート・ルーカスが提示した著名な発展エピソードを導きの糸とし,はじめにそれと整合的な複数均衡モデルを開発する。次に,それぞれの均衡の特性をモデル全体として総合的に把握し(主に数値解析によって),特に高成長均衡が達成されるための要件を明らかにしたい。得られる知見に基づき,震災からの経済復興にとって何が有効なのかを政策の優先順位を含め考察する。 上記の全体的な研究計画概要に鑑みて,今年度は大きく二つの点で有意義な成果が得られた。まず,復興のための経済政策を考える上での基盤となる理論モデルが開発され,それに基づいて分析を展開した研究が学界において一定の評価を得ることができた(Hosoya, 2017)。このことは,今後の研究を進めていく上での追い風になるだろう。また,本研究プロジェクトでは,さまざまな復興パターンを調査していく必要があるが,そのためには複数均衡モデルで生じうる多様な成長・発展パターンを知っておかなければならない。この第一歩として,モデル横断的なサーベイ論文を著せたことは非常に有意義であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究実施計画に記した内容については,確かな進展がみられたと考えている。すなわち,本研究プロジェクトの中核となる基礎的理論研究が著名な査読付国際学術雑誌にアクセプトされた(Hosoya, 2017, Review of Development Economics, forthcoming)。今後の研究を進めていく上で,これは大きな推進力となる。加えて,研究テーマに即したサーベイを行い,これを論文としてまとめた(Hosoya, 2016)。
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Strategy for Future Research Activity |
先に述べたHosoya (2017) によって,本研究プロジェクトのベースラインモデルが確立されたといえる。今後はこれをいかに拡張,応用するかが課題となる。さまざまな復興プロセスを経た上で,異なる長期均衡が潜在的に併存するためには,経済主体の効用関数の定式化が重要になってくる。Hosoya (2017) を単純に深化させることに加えて,内生的に決定される時間選好率を導入することは,本研究テーマにおいて意味のある拡張と考えられるため,こうした方向性での研究の進展を企図したい。
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Research Products
(3 results)