2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K03455
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
大野 正智 成蹊大学, 経済学部, 教授 (60302311)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国際マクロ経済 / 外的ショック / マクロ統計 |
Outline of Annual Research Achievements |
新しい国際収支基準(IMF第6版)に沿って、日本の国際収支ならびに対外資産の状況を検討した。これによると、サービス収支のうち、知的財産権等使用料収支黒字の増大、並びに、旅行収支の赤字から黒字への転嫁が顕著であることを確認した。さらに、旅行収支では、商用目的は受取支払とも停滞気味であるのに対し、個人目的では、支払いが停滞気味なのに対し、受取は急増していることが明らかになった。 日本の対外資産は2014年末で900兆円以上に上り、2004年末に比べ倍の大きさとなっている。直接投資、証券投資、その他投資、外貨準備等、多くの項目で増加傾向にある、これに対し、対外負債は、2014年末で600兆円弱にあり、2004年末と比べ倍を超える大きさとなっているが、その内訳は、証券投資とその他投資の増加によるとことが大きい。対外資産から対外負債を差し引いた対外純資産では、この10年概ね増加傾向にあり、対外資産取崩しの動きは見られていないことが明らかになった。 ただし、国際競争力を示すIMDインデックスを見ると、成熟債権国に分類される2000年代後半のベルギーや1990年代末ごろのスイスと同水準に日本も近づいてきており、未成熟債権国から成熟債権国へ移行しつつあるような兆候を見出すことができた。 今年度は、先進国について研究を行っていく予定であったので、現在、先進国に共通するデフレ問題と外部要因に焦点を当て、日本のマクロ経済について、デフレ下において、外的ショックが経済成長に強く影響をあたえているかを実証分析した。これによると、先進国の経済発展に大きな影響力を与えるのは、昨今の金融緩和政策ではなく、為替レートなどの外的ショックによるものが強いことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文を2編作成した。1編は、新しい国際収支基準(IMF第6版)に沿った日本の国際収支の状況について検討した。総じて新基準に基づく国際収支統計への理解を整理し、日本について考察したものとなっている。そして、マクロ的な資金の流れと国際収支の新定義との関係を整理した。この論文は、大学の紀要に次年度掲載予定となっている。 もう1編は、日本の経済成長が外的ショックによって強く影響を受けることと確認した研究である。マクロデータを統計パッケージで実証分析し、プログラミング機能も使い構造変化テストも行った。結果としては、大きな構造変化は見られなかったが、東日本大震災発生直後は、やや経済構造の変化が見られるという一般的な理解と整合的な関係となった。この論文は、大学のディスカッションペーパーとして登録し、学内のセミナーで発表を行った。さらに、次年度開催予定の国際的な経済学会(Econometric Society)での発表申請が受理されており、その発表に向けて準備進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
日本以外の国際収支と対外資産についてデータを集め分析していく予定である。世界各国の国際収支と対外資産に関するデータを、時系列と横断面の両方でパネル化して実証分析を進めていく予定である。また、国際学会に発表予定の論文について、専門家や学会で得たコメントを生かし研究を進めるとともに、専門誌への投稿を予定している。 この分野の最新の研究成果と分析手法の調査を、文献入手や学会参加を通して引き続き研究を行い、収集したデータに関する統計的分析を進めていく予定である。したがって、図書費、旅費、コンピュータ関連用品、統計処理ソフトなどへの支出が見込まれる。また、英語の論文作成に関して、校正サービスが必要になるものと見込まれる。
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