技術が資本に体化された下での技術転換に関するミクロデータ分析

2015 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 15K03459
• Research Institution: Tokyo Keizai University
• Principal Investigator: 中村 豪 東京経済大学, 経済学部, 教授 (60323812)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2018-03-31
• Keywords: 生産性 / 技術転換 / 修繕 / 鉄鋼業

Outline of Annual Research Achievements

今年度は分析に必要なデータの収集、および産業の状況を把握するための資料収集などの文献調査を中心に進めた。
戦後の鉄鋼業における技術転換期であった1950～60年代の生産活動等について、八幡製鉄では「八幡製鐵資料」として詳細なデータを工場別に記録しており、ここから生産性および修繕に関わるものを収集している。生産性に関しては、粗鋼生産量、就業人員数、就業延時間数、出鋼回数といった変数についてデータをそろえ、各工場の労働生産性を比較的高い精度で計算できるだけの情報が得られた。また本研究の一つの特徴である修繕については、生産時間などとともに修繕に費やした時間が得られている。これらは工場別に得られたデータであるが、工場によって使用する生産技術が異なるため、技術別に生産性や修繕の程度を評価することも可能である。なお、当該資料は1947年から利用可能であるが、生産性を一貫した形で計算できるのは1953年からであることが分かった。
産業の状況を把握するための資料としては、当時の鉄鋼業に関する文献を、特に八幡製鐵に関する記述があるものを中心に収集した。鉄鋼業全体の生産動向や、八幡製鐵における技術動向などを記した資料が収集されている。分析対象期間の状況をその前後の期間との比較で理解することも視野に入れ、分析対象期間外の文献も収集してある。
収集したデータを用いて、簡単な予備分析も行っている。修繕時間については、かなり細かな変動が見られるが、中期的な傾向としては概ね横ばいということが認められた。すなわち新技術が採用された後も、旧技術の修繕が従前の水準で行われていることが分かった。また既存研究にあるような産出との相関は､このデータからは見られなかった。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

2015年度においては、分析に必要なデータの収集と、分析対象企業・産業の当時の状況を知るための資料収集を中心に進めることとしていた。このうち当初必要であると想定していたデータのうち基本的なものについては、2015年度内に収集できた。これにより、記述的なものではあるが、予備分析にも着手できている。文献については今後の研究の進捗に応じてまた必要性が生じる可能性もあるが、現時点でも幅広く当時の日本の鉄鋼業に関する資料が集められている。

Strategy for Future Research Activity

データの収集については順調に進められたため、今年度は分析枠組みの設計から実際の推定作業へと進む予定である。生産性の分析一般に求められる内生性の問題への対処や、本研究の特徴の一つである技術転換との関連をどのように分析に織り込むかといったことなど、分析上の課題についてどのように対応するのが適切であるかということも、先行研究など踏まえながら検討していく。データの統計的な処理に頼れないものがある場合は、収集している文献をサポートエビデンスとして活用することも視野に入れる。

Causes of Carryover

文献資料や物品の購入を中心に使用していたところ、当初在庫ありということで購入を予定していた古書が､実際には在庫しておらず、購入できないということが年度末近くに判明した。そのため無理に当該年度中に予定額を使い切らず、また在庫が認められ次第再度購入を試みることとした。

Expenditure Plan for Carryover Budget

上記のような事情であり、当面は資料の在庫の有無を確認しながら、当初予定の使用計画を進める。必要な資料を見直し、類似の内容を持つものがないか調査も合わせて進める。