2016 Fiscal Year Research-status Report
海上輸送産業におけるマークアップとリスクプレミアムの計測および評価に関する研究
Project/Area Number |
15K03463
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
手塚 広一郎 日本大学, 経済学部, 教授 (90323914)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 海上輸送産業 / 不定期船市場と定期船市場 / 不確実性 / マークアップ / リスクプレミアム / 集中度 / 容量制約 / 貯蔵不可能性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主たる目的は,海上輸送産業におけるマークアップとリスクプレミアムの計測を行い,それによって市場成果の評価を行うことである.そのために,本研究では以下のことを行っている.第1に,海上輸送のサービスがもつ「貯蔵不可能」や「容量制約」などの性質に着目し,非協力ゲームを用いて不確実性下における企業行動のモデル・ビルディングを行い,均衡価格式を導出する.また,この式から価格と限界費用の乖離を①市場参加者が要求するリスクプレミアムの部分と②市場の集中等に伴うマークアップの部分とに,それぞれ要因分解する.第2に,海上輸送産業の定期船市場および不定期船市場に対してこの均衡価格式を適用して実証分析を行い,リスクプレミアムとマークアップの計測を行う.第3に,これらの結果をもとに海上輸送産業の市場成果を評価する. 本年度は,第1点および第2点について重点的に検討した.第1に,モデル・ビルディングに関しては,容量制約を表現するために供給曲線の形状を線形から指数関数に変更し,なおかつ需要曲線の傾きを変えることができるような形での均衡価格式を導出した.それに加えて,線形のモデルについても,これまでの分析枠組みを拡張して,集中度とリスクプレミアムに関するいくつかの解釈を得た.第2点のデータ分析に関しては,これまでの分析をもとにして,リスクに対する態度をカリブレートし,2010年以降の不定期船市場における市場構造の変化を数値の上で示した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にて示したように,第1点のモデル・ビルディングについては,平成28年度にはこれまでのものを拡張・展開させたいくつかのモデルを設けた.そして,2016年8月にドイツ・ハンブルグで開催されたIAME(国際海運経済学会)コンファレンスにて成果の一部を報告している.なお,ここでの報告タイトルは,An Analysis on the Relationship between Risk Appetite and Shipping Freight Marketsである.それととともに,2017年2月には,日本海運経済学会・関東部会においても成果の一部を「不定期船市場における供給者のリスクへの態度を考慮した市場価格モデル(報告者は上智大学・石井昌宏氏)」として公表した.第2点のデータ分析に関しては,既に論文を投稿し,2017年4月現在,査読中である.また,投稿した内容の一部は,オーストラリアのRMIT(ロイヤルメルボルン工科大学)で開催されたコンファレンスにおいて,Economic Linkage Between Shipping Freight Rate and Commodity Marketsという表題で報告した.あわせて,不定期船市場に関わる実務経験者に対して会合を設け,これら一連の研究を報告し,意見交換をした.こうした意見交換は,平成29年度も引き続き進め,本研究の改善を試みる. その他,平成28年度は,本研究で行うアプローチと並行して,従来行われる計量分析の方法を用いて定期船・不定期船市場の限界費用曲線の推定とマークアップの計算を行うこととしていたが,これについては現時点でもひきつづき検討している. 以上のことから,本研究は「おおむね順調に進捗している」といえる.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,本研究の最終年度であることから,特にこれまでの成果を広く公表することと今後の研究の進め方を検討することに重点を置く.海上輸送産業のモデル・実証分析によって得られた成果については,2017年6月に京都開催されるIAME(国際海運経済学会)をはじめとした国際学会にて報告する.また,2017年4月に香港理工大学で開催されるリサーチ・セミナーにおいて,これまでの成果の一部を報告し,香港理工大学のLuo教授などとの今後の国際的な共同研究なども含めた研究の展開可能性について検討する.あわせて,平成29年度においても,実務経験者との会合を設け,これまでの研究成果の報告と意見交換を引き続き行う.こうした意見交換によって,モデルを改善させるだけでなく,本研究の実務的な見地からの有用性も検討することとする. 論文の投稿に関して,現在査読中の論文については,結果が判明次第,それに対応する.それに加えて,これまでの成果や学会報告について,いくつかの論文にまとめた上で関連する雑誌(Transportation Research part B, Maritime Policy and Managementなど)に投稿する.この中には,海外誌のみならず国内の研究雑誌も含まれる. 一連の研究成果を論文にまとめることを通して,この3年間の成果を取りまとめ,あわせて今後の研究の展開についても検討する.
|
Causes of Carryover |
次年度使用額として,支出を予定していた旅費について,当初予想よりも安価であったために,33,210円の差額が発生し,それを繰り越すこととなった.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の国内旅費について,本年度繰り越し分を上乗せして使用する.
|
Research Products
(7 results)