2015 Fiscal Year Research-status Report
国際知財取引・技術拡散の阻害要因と情報通信・輸送技術の高度化の実証分析
Project/Area Number |
15K03467
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
武智 一貴 法政大学, 経済学部, 教授 (80386341)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 萬里 専修大学, 経済学部, 准教授 (40424212)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 貿易コスト / 市場ごとの価格付け / 生産性 / 外部研究開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、技術革新の成果を社会で享受するために、財や情報の空間的な移動にかかるコストに焦点をあて、その原因や社会厚生への影響を分析するものである。それらコストを総称して貿易コストと呼ぶ。貿易コストの測定には、貿易コストデータを入手する方法があるが、データの入手可能性の問題から、財取引データや財価格データを用いて推定する方法が多く行われている。本研究はこれまでの財価格データを用いた研究の問題点を指摘し、正しい推定によりこれまでに考えられていたよりも貿易コストが大きいことを明らかにした。具体的には、これまでの研究では産地価格を利用していないものが多く、実際の財の移動と価格差が対応していないという問題があった。また、供給を行わないという選択肢が選択されることで、供給が行われているケースのデータのみ用いた測定の場合、貿易コストの影響が過小に評価されるという問題も存在する。そして、各市場において設定する価格が市場ごとで異なっている場合には、価格差が単なる貿易コストだけでなく、市場構造などを通じたマークアップの違いも含むという問題がある。これらの問題を考慮するために、産地価格がわかるデータを用い、供給の選択行動を明示的にモデル化し、市場ごとの価格付けの違いを取り込んだフレームワークを開発した。生産者は貿易コストの増加を価格にすべて転嫁せず、高い生産性の生産者のみ貿易コストの高い市場に供給する事が明らかになった。これにより、正確に貿易コストを推定でき、これまで考えられていたよりも貿易コストが大きい事を実証的に示した。また、情報の移動については、その影響を外部の研究開発の利用と生産性の関係から分析を行った。外部研究開発を利用している生産者は高い生産性を持つことが示され、高い生産性の生産者のみ移動のコストをカバーできる点が明らかにされた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの研究をすすめ、各市場の特性を取り込んだモデルの開発を行っているが、実証分析で取扱い可能な形での定式化がまだ完了しておらず、実証分析に進むことが出来ていない為。
|
Strategy for Future Research Activity |
モデルの一般化と同時に、データの特性を利用して、一般化されていないモデルであっても目的となる仮説を検証可能な形に修正する事を予定している。これにより、より焦点が絞られた研究を行うことができる。これまで入手できていないデータについては、現在入手中であり、それらを実証分析に用いることが出来る形に成形する予定である。モデルの一般化については、近年行われている空間経済のフレームワークを考慮し、解析的な形式だけでなく、数値計算集約的な形で分析できることを試みる。
|
Causes of Carryover |
新規モデルの開発が遅れたため、海外学会報告を今年度は行っていない。また、モデルの開発と同時にデータの入手を行っていたが、データの入手についても2015年度は開始していないため、次年度使用額が発生した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たなデータの入手を開始し、すでに入手している大規模データと整合的な形で成形する予定である。また、モデルをより限定された形で開発し、実証分析を可能化し、学会報告等を行う予定である。
|
Research Products
(3 results)