2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K03470
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
浅井 澄子 明治大学, 政治経済学部, 教授 (00329476)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 書籍市場 / 小説 / 単行本 / 文庫本 / 需要 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度の主要成果は、以下の3点である。 1 時系列分析の手法を用い、日本の書籍市場の構造変化のタイミングの把握、ならびに市場規模と新刊書の発行点数との関係について実証分析を行った。その結果、市場規模の構造変化は1983年、新刊書の発行点数の構造変化は1996年に生じており、市場規模が縮小したのちも、新刊書の発行は増加傾向にあり、多様性は確保されていたことが示された。この結果は、Publishing Research Quarterly, 31(4)で公表し、ベクトル自己回帰分析で両者の関係を分析した結果は、大学の紀要論文として発表した。 2 週間販売部数のデータを利用し、単行本で発行された小説と文庫本で発行された小説の購入パターンをBassモデルをもとに分析した。その結果、価格が高い単行本のほうが、発売開始時に購入が集中すること、これまでに実績のある作家の作品ほど、発売開始当初の集中度が高いこと、書店が出版社に書籍を返却できる返却可能期間は、書籍の販売の集中の程度と膨大な数の新刊書が発行される状況を考慮すると、おおむね妥当なものであると考えられる。この結果は、Publishing Research Quarterly, 31(3)で発表した。 3 文庫本の需要関数と価格関数を連立で推定することで、文庫本の需要と価格の決定要因を明らかにした。また、これまでに実績のある作家ほど、電子書籍は提供されていない傾向があることも併せて示された。この結果は論文としてとりまとめ、Journal of Cultural Economicsに投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は2015年度より開始のプロジェクトではあるが、始動に向けて準備をしていたこともあり、大学の紀要論文1本のほか、海外の査読付き学術雑誌に2本の論文として、すでに掲載された。全体的にみると、当初の計画よりも前倒しで進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
書籍市場は製品が差別化された市場であるが、2015年度の研究で推定した需要の価格弾力性はすべての書籍に共通の値として計測されたものであった。今後は、製品差別化を考慮し、離散選択モデルで書籍タイトルごとの需要の価格弾力性を求めるとともに、再販売価格維持制度の継続が出版社にとって適切であるのか、否かについて検証する。 また、実証分析だけではなく、海外の再販売価格維持制度の概要についても整理をしておきたい。 さらに、米国や英国では、書籍市場に再販売価格維持制度が適用されていないことから、価格割引率と割引のタイミング、さらには日本で出版された書籍との価格水準の比較を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2015年度末に購入したいデータ・ベースがあったが、これは5万円を超え、残額では購入できないものであったため、年度末の購入を次年度の購入に持ち越すこととした。これによって、未使用15,040円が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年年度に持ち越しとして、2016年度の交付額と合わせて支出する予定である。
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