2015 Fiscal Year Research-status Report
地方分権化におけるインドネシアとフィリピンの地域間格差の分析
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15K03473
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
秋田 隆裕 立教大学, 経営学部, 教授 (50175791)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地域間格差 / 地方分権 / 消費支出格差 / 教育拡充 / インドネシア / フィリピン |
Outline of Annual Research Achievements |
1、地方分権化におけるインドネシアの教育拡充と消費支出格差に関する分析を行いインドネシアで開催された国際会議で発表しWorking Paperとして公表した。この研究では、まずインドネシアを都市と農村地域に分け、1997年から2011年までの毎年の全国社会経済家計調査(Susenas)データを用いて、Gini係数により都市農村間と都市内・農村内の教育格差分析を行った。それによると、農村部における初等教育の拡充は、農村内の教育格差を縮小させているばかりではなく、都市農村間の教育格差も縮小させていることが分かった。Oaxaca-Blinder手法による都市農村間の消費支出格差の分析によると、教育格差が都市農村間消費支出格差の主な要因であることが分かった。都市農村間消費支出格差が2000年代以降減少しているが、その主な要因は都市農村間教育格差の縮小である。また、Theil 尺度による要因分析によると、近年の消費支出格差の拡大は、特に都市部における高等教育家計グループ内の格差拡大が主な要因であることが分かった。2、全国社会経済家計調査データを用いて、地方分権化におけるインドネシアの消費支出格差の推移を地域(region)、州(province)、県・市(Kabupaten/Kota)などの空間的な観点から分析した。この研究によると、2000年までの格差縮小は都市農村間の格差縮小が主な要因であり、一方2000年から2005年までの格差拡大は都市農村間格差拡大に加えて都市内および農村内の県・市間格差拡大が大きく寄与していることが分かった。2007年以降消費支出格差が大きく拡大しているが、その主な要因は2007年以前と異なり、県・市内の家計間格差拡大である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、研究プロジェクトの第1段階として、アジア経済研究所、世界銀行、UNU/WIDER、アジア開発銀行、国際通貨基金などのホームページや研究代表者が所属する大学が契約している検索システム(EBSCOhost、JSTOR、Science Direct、Oxford Journals、Springer Link、Wiley Interscience Journalsなど)を用いて、地方分権化と地域間/都市農村間所得格差に関する最新の資料と学術的な文献の収集を行った。また、インドネシアの国家開発計画庁・財務省・統計局などを訪問し、インドネシアにおける地方分権化政策(行政分権化と財政分権化)、地域格差是正策に関する最新の資料と全国社会経済家計調査データ、州別・県別GDPデータ、地方財政データの収集も行った。インドネシアに関しては長期間の全国社会経済家計調査データを用いて、地方分権化における消費支出格差推移の分析を行った。教育拡充と消費支出格差の分析結果は、国際会議で発表しWorking Paperとして公表している。その修正バージョンは、査読付き国際専門誌(Social Indicators Research)で公表される予定である。地域(region)、州(province)、県・市(Kabupaten/Kota)などの空間的な観点からの消費支出格差の分析結果についても、まず国際会議で発表しWorking Paperおよび国際的な専門誌の中で公表する予定である。また、2001年から2012年までの全国社会経済家計調査データ、州別・県別GDPデータ、地方財政データを用いて構築された州別パネルデータを用いて、インドネシアにおける財政分権化と家計間消費支出格差のパネルデータ計量分析も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度も27年度に引き続き、国際機関などのホームページやオンライン検索システムにより、地方分権化と地域間/都市農村間格差に関する資料と学術的な文献の収集を行う。また、インドネシアの国家開発計画庁・財務省・統計局とフィリピンの国家経済開発局・財務省・統計局などを訪問し、インドネシアとフィリピンの地方分権化政策(行政分権化と財政分権化政策)と地域格差是正策に関する最新の資料と地域所得データを収集する。さらに、収集した地方分権化政策に関する資料と学術的な文献により、インドネシアとフィリピンにおける地方分権化政策の変遷を概観する。具体的な実証分析としては、第1に、平成27年度に実施したインドネシアにおける空間的な観点からの消費支出格差の分析と同様な分析をフィリピンでも行う。ここでは、2000年代以降の家計所得消費調査データ(FIES: Family Income and Expenditure Survey)を用いて、地域(region)、州(province)などの空間的な観点から、地方分権化政策導入以降のフィリピンにおける消費支出格差の分析を行う。インドネシアについては、2000年以降の項目別(歳入分与(DBH)、一般目的割当金(DAU)、特定目的割当金(DAK)など)の地方財政収入データを用いて、Gini係数と変動係数により財政収入地域間格差の収入項目要因分析を行う。また、1990年代以降の県・市別地域所得データを用いて、Theil尺度の2段階要因分解手法による地域間格差の分析も行う。研究成果は、国内外の学会や大学のセミナーなどで発表しWorking Paperなどの形で公表する。
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Causes of Carryover |
27年度中にフィリピンでの資料・データ収集を予定していたが、キャンセルになったためその部分の海外出張費がかからなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度中に、インドネシアでの資料・データ収集に加えて、フィリピンの国家経済開発局や統計局での資料・データ収集を計画している。また、レーザープリンターのカートリッジ購入などの消耗品の購入も予定している。
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