2016 Fiscal Year Research-status Report
地方分権化におけるインドネシアとフィリピンの地域間格差の分析
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15K03473
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
秋田 隆裕 立教大学, 経営学部, 特任教授 (50175791)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地域間格差 / 地方分権 / 消費支出格差 / 教育拡充 / インドネシア / フィリピン |
Outline of Annual Research Achievements |
1996年から2010年までの毎年の全国社会経済家計調査データ(Susenas)を用いて、階層的格差分解手法(hierarchical inequality decomposition method)により、地方分権化におけるインドネシアの家計間消費支出格差の推移を都市農村(urban/rural)、地域(region)、州(province)、県・市(kabupaten/kota)などの空間的な観点から分析した。この研究によると、都市と農村間の格差は家計間消費支出格差の約15-25%を説明している。一方、県・市間の格差については、家計間消費支出格差への寄与度に関して都市と農村地域で異なる値を示している。都市と農村別に寄与度を計測すると、都市では20-30%に対して農村では15-20%になる。この都市と農村間の構造的な違いを考慮して階層的格差分解手法により県・市間格差の家計間消費支出格差への総合的な寄与度を計測すると約15-25%になる。すなわち、都市農村間格差と県・市間格差を合わせると家計間消費支出格差への総寄与度は約40%になることが分かった。スマトラ、ジャワ・バリ、カリマンタン、スラウェシ、東インドネシアの5地域間の格差、州間格差、県・市間格差を個別にみると、5地域間格差の家計間消費支出格差に対する寄与度は都市地域については1-2%とほとんど無視できる程度である。それに対して、州内における県・市間格差は家計間消費支出格差の約10-15%を説明しており、また増加傾向にある。一方、農村地域については、5地域間格差は家計間消費支出格差の約2-5%を説明しており、都市地域に比べると若干高い寄与度を示している。それに対して、州内の県・市間格差は都市地域同様、家計間消費支出格差の約10-15%を説明している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度についても27年度同様、アジア経済研究所、世界銀行、UNU/WIDER、アジア開発銀行、国際通貨基金などのホームページや研究代表者が所属する大学が契約している文献検索システムを用いて、地方分権化と地域間/都市農村間所得格差に関する最新の資料と学術的な文献の収集を行った。また、インドネシアの国家開発計画庁・財務省・統計局などを訪問し、インドネシアにおける地方分権化政策(行政分権化と財政分権化)、地域格差是正策に関する最新の資料と全国社会経済家計調査データ、州別・県別GDPデータ、地方財政データの収集も行った。インドネシアに関しては、1997年から2010年までの全国社会経済家計調査データを用いて地方分権化における家計間消費支出格差の推移を都市農村(urban/rural)、地域(region)、州(province)、県・市(kabupaten/kota)などの空間的な観点から分析した。研究成果は、タイのバンコックとインドネシアのマランで開催された国際会議で発表しアジア開発銀行研究所のWorking Paperとして公表した。最終的には、アジア開発銀行研究所から出版される予定の本の中で公表される予定である。また、その修正バージョンは査読付き国際専門誌に投稿した。現在、県・市レベルの地方財政収入データ(地方税と歳入分与(DBH)、一般目的割当金(DAU)、特定目的割当金(DAK)などの中央政府からの移転収入)を用いて地方分権化における財政収入格差の要因分析を行っているが、その研究成果はインドネシアで開催される国際学会などで発表する予定である。一方、フィリピンに関しても同様な分析手法により地方分権化における地域間格差の推移を家計調査データや地域所得データを用いて分析する予定であるが、若干実施が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度も28年度に引き続き、国際機関などのホームページやオンライン文献検索システムにより、地方分権化と地域間/都市農村間格差に関する資料と学術的な文献の収集を行う。また、インドネシアの国家開発計画庁(Bappenas)・財務省・統計局とフィリピンの国家経済開発局(NEDA)・財務省・統計局などを訪問し、インドネシアとフィリピンの地方分権化政策(行政分権化と財政分権化政策)と地域格差是正策に関する最新の資料と地域所得データを収集する。さらに、収集した地方分権化政策に関する資料と学術的な文献により、インドネシアとフィリピンにおける地方分権化政策の変遷を概観する。具体的な実証分析としては、第1に、平成27および28年度に実施したインドネシアにおける空間的な観点からの家計間消費支出格差の分析と同様な分析をフィリピンでも行う。ここでは、2000年代以降の家計所得消費調査データ(FIES: Family Income and Expenditure Survey)を用いて、地域(region)、州(province)などの空間的な観点から、地方分権化政策導入以降のフィリピンにおける家計間消費支出格差の分析を行う。インドネシアについては、28年度に引き続き、2000年以降の項目別(地方税収入、歳入分与(DBH)、一般目的割当金(DAU)、特定目的割当金(DAK)など)の地方財政収入データ(県・市レベルのデータ)を用いて、Gini係数と変動係数により財政収入地域間格差の収入項目要因分析を行う。研究成果は、国内外の学会や大学のセミナーなどで発表しWorking Paperなどの形で公表する。
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Causes of Carryover |
平成28年度中にフィリピンでの資料・データ収集を予定していたがキャンセルになったためその部分の海外出張費がかからなくなった。また、数量分析用のソフトであるGaussと統計分析用のSTATAを購入する予定であったが、購入するのが遅れた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度中に、フィリピンの国家経済開発局や統計局での資料・データ収集を計画している。また、PCソフトのGaussとSTATAの購入、フィリピンの家計所得消費調査データの購入も予定している。
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