2017 Fiscal Year Research-status Report
地方分権化におけるインドネシアとフィリピンの地域間格差の分析
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15K03473
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
秋田 隆裕 立教大学, 経営学部, 特任教授 (50175791)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地域間所得格差 / 地方分権 / 消費支出格差 / インドネシア / フィリピン |
Outline of Annual Research Achievements |
2001年から2012年までの県レベルの収入項目別財政収入データを用いて、Gini係数による格差分解手法によりインドネシアにおける一人当たりでみた財政収入格差の要因分析を行った。分析結果の概要は以下の通りである。1、1997-98年の経済危機後のスハルト政権崩壊を契機とする民主化の一環として制定された地方分権化2法が実施に移された2001年以降、一人当たりの財政収入地域間格差は非常に高いレベルにあり、また増加傾向がみられる。2、天然資源と課税基盤の不均一な地域的分布を反映して資源収入などから得られる歳入分与(DBH: Dana Bagi Hasil)の地域間格差は非常に高く、財政収入格差を高める要因になっている。3、一般目的割当金(DAU: Dana Alokasi Umum)の地域間格差は歳入分与と比べるとかなり低く、財政収入格差を縮小させる要因になっている。しかし、一般目的割当金の地域間格差は拡大傾向にあり、その格差縮小効果は低下傾向にある。4、一般目的割当金の地域間格差が拡大している要因をTheil尺度による格差分解手法を用いて分析すると、Nusa Tenggara、Maluku、Papuaなどの貧困州を含む東部インドネシア内の地域間格差拡大が主な要因になっている。5、国レベルの優先的な政策を実施するために導入された地方への特定目的割当金(DAK: Dana Alokasi Khusus)の割当分野数が徐々に増加しており、特定目的割当金の地域間格差は縮小傾向にある。従って、特定目的割当金の拡充は財政収入の地域間格差を縮小させることが期待される。6、一般目的割当金の配分方法には以前より問題があることが指摘されていた。したがって、その格差縮小効果を高めるためには配分方法の見直しが必要であろう。この研究成果は政策提言に直接に結びつくものであり、意義は十分に認められる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度についても引き続き研究代表者が所属する大学が契約している文献検索システムを用いて地方分権化と地域間/都市農村間所得格差に関する最新の資料と学術的な文献の収集を行った。また、インドネシアの国家開発計画庁(Bappenas)、財務省、統計局などを訪問し、インドネシアにおける地方分権化政策(行政分権化と財政分権化)、地域格差是正策に関する最新の資料と全国社会経済家計調査データ、州別・県別GDPデータ、地方財政データの収集を行った。具体的な研究の進捗状況は以下のとおりである。1、2001年から2012年までの毎年の県別(kabupaten/kota)・収入項目別財政収入データを用いて、Gini係数による格差分解手法によりインドネシアにおける一人当たりでみた財政収入格差の要因分析を行った。この研究成果は、7月17日と18日に北スラウェシ州のManadoで開催された国際会議(インドネシア地域学会)で発表した。2、28年度に引き続き全国社会経済家計調査データを用いてインドネシアにおける家計間消費支出格差の推移を空間的な観点から分析した。この研究成果は、国際大学研究所のワーキングペーパーとして公表した。平成30年度中には、査読付き学術誌Social Indicators Researchに掲載される予定である。3、2005年から2013年までの州別産業別GDPデータ(33州・33産業分類)を用いてインドネシアにおける地域所得ベータ収束に関する予備的な分析を行った。4、フィリピンについては、地方分権化と地域間所得格差に関連する学術的な文献の収集を引き続き行っているが、2003年と2006年の家計所得消費調査(FIES)データを用いた地域間格差の分析も開始した。以上から計画に沿って行っており、おおむね順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度も29年度に引き続き、国際機関などのホームページやオンライン文献検索システムにより、地方分権化と地域間/都市農村間格差に関する最新の資料と学術的な文献の収集を行う。また、インドネシアの国家開発計画庁(Bappenas)、財務省、統計局とフィリピンの国家経済開発局(NEDA)、財務省、統計局などを訪問し、インドネシアとフィリピンの地方分権化政策(行政分権化と財政分権化政策)と地域格差是正策に関する最新の資料と地域所得データおよび家計調査データを収集する。平成30年度の研究計画は以下のとおりである。1、平成28年度と29年度に実施したインドネシアにおける空間的な観点からの家計間消費支出格差の分析と同様な分析をフィリピンでも行う。ここでは、2000年代以降の家計所得消費調査データ(FIES)を用いて、地域(region)、州(province)などの空間的な観点から、地方分権化政策導入以降のフィリピンにおける家計間消費支出格差の分析を行う。2、29年度に引き続き、2000年以降の収入項目別の地方財政収入データ(県・市レベルのデータ)を用いて、Gini係数と変動係数により財政収入地域間格差の収入項目要因分析を行う。本研究成果は、7月下旬インドネシア中部ジャワ州のSurakartaで開催されるインドネシア地域学会で発表する予定である。3、2005年から2013年までの州別産業別GDPデータ(33州・33産業分類)を用いて人口重み付き変動係数によりインドネシアにおける州間所得格差の要因分析を行う。本研究成果も、7月下旬インドネシア中部ジャワ州のSurakartaで開催されるインドネシア地域学会で発表する予定である。以上1、2、3の研究成果はWorking Paperなどの形で順次公表する予定である。
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Causes of Carryover |
平成29年度中にフィリピンでの資料・データ収集を予定していたがキャンセルになったためその部分の海外出張費がかからなくなった。また、統計分析用のSTATAを購入する予定であったが、購入するのが遅れた。平成30年度中に、インドネシアの国家開発計画庁(Bappenas)、財務省、統計局とフィリピンの国家経済開発局(NEDA)、財務省、統計局での資料・データ収集を計画している。また、PCソフトのSTATAの購入、フィリピンの家計所得消費調査データの購入も予定している。
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