2015 Fiscal Year Research-status Report
日本企業の管理職昇進システムとやる気に関する実証分析
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15K03477
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Research Institution | Kanazawa Gakuin University |
Principal Investigator |
奥井 めぐみ 金沢学院大学, 経営情報学部, 教授 (90333161)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | インセンティブ / 昇進 / 賃金 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、既存の集計データを利用した分析を中心に行った。賃金構造基本統計調査の男性一般労働者の集計データを利用し、「昇進による賃金上昇率」や「昇進確率」が労働者の努力水準の代理変数としての労働時間にプラスの影響を与えるのかを分析し、大学の紀要論文とした。 同時に、株式会社インテージに、独自のウェブアンケート調査を依頼した。その際、アンケート調査票の設計は、先行研究の内容を吟味し、分析に必要な情報が得られるものを設計した。特に、「やる気」を尋ねる項目として主観的な努力水準を尋ね、複数時点における「やる気」の変化も回答させた。アンケート調査は2015年11月20日から2015年11月24日にかけて行われた。対象は、1都3県(東京都・埼玉県・神奈川県・千葉県)の30歳から59歳までの会社員の男女で、アンケートの有効回答者数は、4901人であり、その内訳は、現在の会社で課長以上への昇進のない男性1333人、同じく女性1441人、現在の会社で課長以上の昇進有りの男性1734人、同じく女性393人となっている。過去のアンケート調査では、女性管理職のデータがほとんど入手できずに、女性管理職の分析に制約があったが、今回は女性管理職についても多くのデータが得られている点は、特筆すべきである。 独自アンケート調査に基づく分析結果は、論文にまとめ、日本経済学会の秋季大会に応募した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の初年度の計画の柱は、次の二つになっている。 1)既存の集計データを利用した分析を中心に行う。 2)アンケート調査会社にウェブアンケート調査を依頼する。 1)については、「集計データからみる昇進のインセンティブ」というタイトルで、2016年の金沢学院大学紀要第14号(pp.33-43)に掲載済みである。 2)については、株式会社インテージに独自のアンケート調査を依頼し、2015年11月20日から2015年11月24日にかけてウェブアンケートが実施されている。アンケートの個票データもすでに入手済みである。このデータを利用して分析を行った論文は、4月が締切であった2016年日本経済学会秋季大会に応募済みである。 以上2点から、おおむね、計画通りに進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、独自アンケート調査を終え、このデータを用いた研究結果をまとめている。日本経済学会2016年度秋季大会に応募した論文では、主にインセンティブ理論の観点から、昇進確率や昇進による賃金上昇率が努力水準に与える影響に焦点を当てている。 しかし、この分析では、アンケートで尋ねている、企業内での転職の有無や仕事の経験等がやる気に与える影響については、あまり分析されていない。小池・猪木(2002)で利用されたアンケート調査では、企業内での経験が昇進に与える影響の重要性について分析しており、今後は、この点が努力水準に与える影響にも焦点を当てることができる。さらには、昇進のタイミングが努力水準に与える影響についても分析の余地がある。以上の2点について、より研究を深めることで、独自のアンケート調査データを十分に活用していきたい。 同時に、学会発表論文については、討論者のコメントを踏まえた上でリバイズし、専門誌への発表を目指す。
小池和男・猪木武徳(2002)『ホワイトカラーの人材育成―日米英独の比較』(東洋経済新報社)。
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Causes of Carryover |
初年度は、予定していた研究出張や学会への参加が無かったために、旅費の消化がなかった。これが大きな理由である。またアンケート調査では、質問項目を厳選することで、費用を予定よりも安く抑えることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
プリンタのインク代やスキャナの購入など、研究環境の充実に利用する。また、労働経済学や計量経済学の専門書の購入にも利用する。
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