2017 Fiscal Year Research-status Report
日本企業の管理職昇進システムとやる気に関する実証分析
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15K03477
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Research Institution | Kanazawa Gakuin University |
Principal Investigator |
奥井 めぐみ 金沢学院大学, 経営情報学部, 教授 (90333161)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | インセンティブ / やる気 / 管理職 / 昇進 / 育児休業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、管理職昇進世代に対する独自のアンケート調査あを用いた実証分析を通して、男女の管理職昇進のタイミングと昇進の要因を明らかにし、それがやる気に与える影響を分析することを目的としている。研究1年目には独自アンケート調査の実施を行い、2年目には分析と学会報告を行い、順調に研究を行ってきた。 3年目である平成29年度は、新たに2つの学会報告を行い、これらの改訂やアンケート調査を利用した新たな論文作成を行い、紀要に掲載した。研究内容は次の通りである。 今後の昇進の可能性や自身の職場における相対的な昇進スピードが、労働者の努力水準に影響を与えるかどうかを分析した。インセンティブ理論では、昇進や昇進に伴う昇給が労働者のインセンティブを高めることが知られているが、同じ役職に昇進している場合でも、今後の昇進の可能性や現在の昇進スピードによってインセンティブに違いがあるかについては、実証分析がない。分析結果より、1)現在の昇進可能性は努力水準を有意に高めること、2)現在の職場に役職付きでない一般社員として入社した課長では昇進可能性や昇進スピードが努力水準を有意に高めること、3)現在の職場に一般社員として入社した部長では昇進可能性や昇進スピードは努力水準を有意に高めないことが示された。また、本人の年齢が職場の平均昇進年齢よりも低いほど主観的な昇進可能性が高くなることも示され、インセンティブ理論のいう、日本の遅い昇進が労働者のインセンティブとなるという点と整合的であった。 学会報告を行った2つの研究、「育児休業取得期間と女性労働者のやる気」と「管理職昇進の決定要因」の改訂も平行して行っている。この2つの論文については改訂後に雑誌に投稿し、公表することを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年目には、研究成果を国内外の雑誌に投稿、掲載を目指す予定であったが、論文の執筆は進めているものの雑誌掲載は紀要に1つのみである。紀要論文は、「昇進と努力水準 -独自データに基づく実証分析-」とのタイトルで、今後の昇進の可能性や自身の職場における相対的な昇進スピードが、労働者の努力水準に影響を与えるかどうかを分析した。現在改訂中の論文は2つあり、二つとも学会で報告済みの論文である。 1つ目は、平成28年度に日本経済学会で報告した論文で、女性の育児休業取得と仕事に対するやりがいとの関係を分析しているもの、もう一つは、日本労務学会で報告した論文で、男女の昇進に影響を与える要因の分析である。この論文のテーマは、当初のやる気とはややずれるが、アンケート調査の性質から分析が可能である。育児休業取得と仕事に対するやりがいの論文は、女性の出産者のデータが非常に少ないことから、分析が困難になっており、改訂に時間がかかっている。昇進に影響を与える要因の分析の方は、学会報告の際、フロアから多くの意見をいただいており、その点を考慮にいれて、より緻密な分析を行う予定である。 以上のように、論文の発表が遅れているという問題はあるものの、研究は進めており、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在改訂中の2つの論文、育児休業取得と女性のやる気、昇進決定要因分析、について改訂を行い、なるべく早い時期に雑誌に掲載することを予定している。また、育児休業取得と女性のやる気の分析は、出産経験者のサンプルが少ないこと、アンケート調査の質問項目に、家庭の情報(夫の所得や育児の協力など)が無かったことから、将来的には、独自アンケート調査をサンプルと質問項目を充実して、再度行うことも検討したい。
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Causes of Carryover |
独自アンケート調査の費用が予定していたより小さかったこと、学会出張が3年目は予定していたよりも少なかったことが影響している。 次年度使用額の使用計画としては、研究発表のための旅費、論文改訂に必要な専門書の購入に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)