2017 Fiscal Year Research-status Report
大学からの知識移転の有効性に関する研究:特許情報を用いた発明者データによる分析
Project/Area Number |
15K03486
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
大西 宏一郎 大阪工業大学, 知的財産学部, 准教授 (60446581)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 典正 大阪工業大学, 知的財産学部, 准教授 (90368150)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 発明者 / 大学院教育 / 特許発明 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在まで大学の知識移転の分析では産学の研究上の連携について非常に多数の研究が行われている。しかしながら、Stephan (2012)等でその重要性が指摘されているにもかかわらず、博士課程修了者の採用を通じた知識移転の効果やその重要性に着目した研究はほとんど行われていない。本研究では大学院教育を受け、その後発明者となった企業内研究者がその教育水準によってどの程度生産性や発明プロセスに違いが出ているのかを実証的に明らかにする。平成29年度は、発明者サーベイの個票データと収集した博士論文データベースの2つのデータベースを主に氏名をキーとして接続し、その作業を完了した。そのうえで、修士課程や課程博士などの大学院教育を受けることが彼らの就職後の研究生産性や研究プロセスにどのような影響を与えるのかをそれらデータを使って統計的に分析することを行った。そもそもの優秀な学生が大学院に進学するというような内生性の問題については、大学卒業年前年における景気動向をデータでとらえ、操作変数として使用することによりコントロールすることとした。なお、操作変数法での第一段階の大学卒業時点での無業者率は大学生の大学院進学率に統計的に有意にプラスの影響を与えていることを示す結果を得た。分析結果では、大学院進学は、その後の特許の被引用件数で計測した特許生産性や特許出願件数にプラスの影響を与えていることが明らかとなった。また、大学院進学により、特許の後方引用件数から計測した技術分野の多様性が上昇し、また科学論文の引用も同時に高まることを示す結果を得た。このような結果は、大学院への進学がその後の発明者の生産性や発明プロセスにプラスの影響を与えていることを示しているといえる。以上の研究成果を取りまとめた。また、関連する研究の発表も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
博士号取得者データベース等が完成が遅延したため、全体的に分析が後ろ倒しになっている。ようやく大学院教育の効果を内生性をコントロールした形で実証することができ、今後順調に進んでいくと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
発明者の組織間移動と知識移転の研究については、内生性のコントロール方法について十分に思索する必要がある。有用な操作変数を考え、その操作変数の効果を通じた組織間移動の効果を明確に示していく予定である。そのほか、必要な分析作業を実施していく予定である。
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Causes of Carryover |
博士号取得者データベースの構築に作業時間を要し、そのために全体として研究スケジュールが後ろ倒しになっている。
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