2016 Fiscal Year Research-status Report
産業クラスター関連政策の定量的評価手法の構築とその応用
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15K03490
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
河上 哲 近畿大学, 経済学部, 教授 (60402674)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 産業クラスター / 産業集積 / 全要素生産性 / 探索的空間データ分析 / 確率フロンティア分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までにパネルデータ化の作業を終えていた『工業統計調査』及び『経済センサス』の個票(事業所)データを用いて、自動車・自動車車体・自動車部分品に分類される各部門の生産関数を推定した。リーマンショックや急激な円高など、分析期間とする2004年~2012年において国内自動車産業が厳しい経済環境に直面していたことを鑑み、生産活動の非効率を前提とする確率フロンティア分析の手法を用いて推定を行った。推定されたパラメータを基に、全要素生産性(TFP)を、①生産フロンティアの変化、②生産効率性の変化、③規模効率性の変化の3つの構成要因に分解して計測した。分析結果より、この期間において川下の組立工程にある事業所も、自動車部分品を製造する事業所も、ともにTFPが低下しており、その低下は主に生産の非効率性要因により説明されることが明らかとなった。一方でTFPの生産フロンティア要因は安定して増大しており、厳しい経済環境下においても着実な技術進歩があったことが認められた。 各事業所の生産フロンティアの変化と事業所の地理的な分布との関係を、地理情報システムを用いて検証した。生産フロンティアの増大が見られる事業所群の地理的な集積をもって「産業クラスター」と定義し、空間統計量を算出するなど探索的空間データ分析の手法を用いて検証を行ったところ、大規模組立工場を中心に自動車関連製造業の産業クラスターが形成されていることが確認された。 これらの研究成果については、中国・天津で開催された国際学会Asia-Pacific Productivity Conference、及びアジア物流研究会において報告を行った。またオランダ・ユトレヒト大学の人文地理・空間計画学部で行われた研究セミナーでも報告し、所属研究者らと今後の研究の方向性について意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パネルデータ化された個票データを用いた確率フロンティア生産関数の推定については、学会等で指摘されていたモデル定式化の問題点も考慮して修正を行い、良好な結果を得ることができた。また、産業クラスターの特定については、前年度までは地理情報システムを用いて視覚的に確認するにとどまっていたが、空間統計量を算出するなど客観的指標に基づいた検証を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果をワーキングペーパーとしてまとめるとともに国際査読誌に投稿する。現在、自動車関連製造業に属する事業所のみに着目して産業クラスターを特定することを試みているが、さらに産業連関構造においてそれらと近接にある産業の立地との関連を検証することを考慮している。産業間のつながり(relatedness)やその複雑性(complexity)と、産業クラスターとの関連を検証する研究が、オランダ・ユトレヒト大学を中心とする研究グループにより進められていることから、ユトレヒト大学を訪問して所属研究者らと分析手法の検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
中国・天津で開催された国際学会Asia-Pacific Productivity Conferenceの旅費・参加費は、勤務校で支給された研究費を用いて支払ったため、その分の未使用が生じた。また2017年度に1ヶ月程度の期間でオランダ・ユトレヒト大学に滞在して研究活動を進めることを計画しており、それにかかる旅費・滞在費用が当初の計画以上に見込まれている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度は、1ヶ月程度の期間でオランダ・ユトレヒト大学に滞在して研究活動を進めることを計画しており、その旅費・滞在費用への使用を見込んでいる。また研究最終年度ということもあり、論文の作成と学術誌の投稿に向けて連携研究者との打ち合わせをより密に行うことを考慮しており、それに伴う国内旅費への使用を見込んでいる。
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