2015 Fiscal Year Research-status Report
市場融合環境におけるインフラ整備と競争の制度設計に関する研究
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15K03491
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
水野 敬三 関西学院大学, 商学部, 教授 (40229703)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三上 和彦 兵庫県立大学, 経済学部, 教授 (30229653)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | インフラ共同所有 / 共同投資 / 生産費用改善投資 / 小売競争効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のテーマは,都市ガス・電力・電気通信等のネットワーク産業における市場融合環境のもとで「複数の垂直統合型企業によるインフラ共同所有および接続・託送が競争促進と経済厚生に与える影響」と「垂直統合型企業の垂直分離とインフラ投資のための資金調達方法の検討」の2つであるが,本年度は第1のテーマの一部である「複数の垂直統合型企業によるインフラ共同所有が競争促進と経済厚生に与える影響」について理論分析を行った.特に,インフラ共同所有のもとでの共同投資(上流部門投資)と個別事業者の生産費用改善投資(下流部門投資)誘因の関係に焦点を当てた理論モデルを構築し,経済厚生分析を行った.これは垂直構造における2種類の投資関係に焦点を当てた理論モデル分析であり,独創性の高い理論研究であると考えている. 理論分析からは次の2つの結果を得た.第1に,生産性の異なる事業者間においても全事業者の意見一致を満たすインフラ共同投資費用の配分ルールは存在し,それを明示的に特徴づけることに成功した.また,その費用配分ルールのもとで共同利潤最大化投資水準が実現できることも示した.第2に,各事業者が異なる市場で生産活動をしているとき,共同投資である上流部門投資と生産費用改善のための下流投資のいずれも社会的視点からみると過少となることを証明した.他方,各事業者が同一の市場で競争しているときには共同投資である上流部門投資は過少であるが,下流の生産費用改善投資は社会的視点からみると過剰になる可能性があることを示した.下流部門投資を過剰とする主たる要因は「事業者間の小売競争効果」である. この分析結果をまとめた研究論文では,上流部門投資が各事業者の個別投資で実行される場合との比較考察も議論している.個別で投資を実行する場合に比べ,インフラ共同所有は上流部門投資と下流部門投資のいずれの投資誘因も高くすることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始当初から10月頃までは「異なる事業環境にある事業者間のインフラ共同所有は如何なる投資費用配分ルールのもとで可能となるか,またそのルールのもとで投資水準は過少なのか」という設問に答える理論考察が主であった.その後,11月頃の研究論文作成途中段階において,「インフラ共同所有下での上流部門投資誘因と下流部門投資誘因の関係」という新たな研究課題の重要性・新規性に気づいた.しかし,垂直構造モデルにおいて上流部門投資と下流部門投資の2種類の投資関係の分析は非常に複雑となったため,幾度となく理論モデルの簡単化を模索した.そのため,上記の分析結果が得られたのは2月下旬頃であった.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,上記の分析結果をまとめた研究論文をより精巧な研究論文にまとめ上げ,それを関係するセミナー・学会で報告し,第1次稿を審査制国際雑誌に投稿する. 続いて第1の研究テーマにおいて明示的に考察されなかった接続・託送料金と企業間の自発的提携の関係をクローズアップしたネットワーク形成理論の応用理論モデルを構築する. その後,第2の研究テーマである「垂直統合型企業の垂直分離とインフラ投資のための資金調達方法の検討」に移行する予定である. 以上の2種類のモデル構築および分析が,この研究プロジェクトにおいて次年度新たに着手される研究である.
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Causes of Carryover |
研究開始当初,理論分析結果が10月末までには導出でき,それを2月末あるいは3月中旬の海外の大学のセミナーで報告する予定であった.しかし,実際には興味深い分析結果を得たのは2月下旬ごろであり,そのため当初予定していた海外出張が中止となったため,海外出張旅費支出分が未消化となった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の海外出張旅費分を次年度に研究成果報告として支出する予定である.したがって,次年度は海外出張旅費支出が当初の予定より多くなる.
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