2016 Fiscal Year Research-status Report
人口減少社会での、大規模移民受け入れと企業のオフショアリングの総合的分析
Project/Area Number |
15K03501
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
内藤 久裕 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (00335390)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 移民 / 社会保障 / 労働市場 / 少子高齢化 |
Outline of Annual Research Achievements |
少子高齢化化による人口減少社会では、様々な社会的経済的問題が起こることが予想される。最も大きな問題と考えられているのは、社会保障の持続可能性である。また経済のグローバル化によって多くの企業が国境を越えて生産活動を行っているなかで、人口が減少してゆく経済では企業が海外に生産活動拠点および研究開発拠点を移すのではないかとの問題も指摘されている。本研究では、少子高齢化化による人口減少社会で、大規模移民受け入れの経済社会への影響の分析と大規模移民受け入れの企業の海外活動への影響の分析を総合的に行う。 今年度は、移民受け入れの分析に関しては次のような研究をおこなった。まず、アメリカの労働市場において、現在移民の比率は15パーセント程度になっているが、それが経済的弱者にどのような影響を与えているかを分析した。具体的には、アメリカの都市における移民比率を過去10年毎の40年間測定し、その移民比率が障害を持っているアメリカ人の労働市場参加率にどのような影響を与えるかを分析した。この研究をおこなう前は、移民の比率は障害をもっている自国民の労働市場参加に負の影響を与えると予測していた。しかし実証研究の結果明らかになったのは、移民の受け入れは障害をもっている労働者に正の影響を与えると言う事であった。 シミュレーションに関しては、アメリカ経済における移民受け入れのシミュレーションを終え、日本経済のシミュレーション分析を始めている。具体的には、社会保障制度において数量的制約があり医療や福祉サービスにおいて受け入れ制限がある場合に、どのような厚生上の効果があるかを検証している。 また論文の出版に関しては、3つの論文が、査読付国際学術誌であるJapanese Economic Review, Journal of Japanese and International Economics, International Review of Applied Economicsに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
移民と企業の海外生産活動の影響を実証的に分析する事が本研究の目的の一つであるが、総務省に対するデータ申請にも関わらず、要求したデータが巨大であるため、まだデータが得られていない。そのため実証分析に入ることができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の問題に対する対策として、以下の様に研究を行う。
1.データを入手するために、現在請求しているサンプルと変数ではなく、サンプルサイズと変数を極力少なくしたデータを総務省に請求する。またこのデータが入手出来た際は、当初計画した本格的な実証分析でなく、preliminaryな分析を行う事によって時間短縮を行う。
2.日本のデータではなく、他国のデーターを使って、移民に関する実証分析を行う。具体的には、フランスのセンサスデータを使い、EUの東方拡大によるフランスにおける東ヨーロッパ移民の増加が、どのようにフランスの雇用に影響を与えたかを分析する。
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Causes of Carryover |
複数の長大な論文の英語校正を3月に予定していたが、論文が完成せずに、年度内に間に合わなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度、これらの論文を執筆し、英語校正費として使用する。
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