2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K03502
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
坂本 和靖 群馬大学, 社会情報学部, 准教授 (40470108)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 世帯内資源配分 / 不平等 / 所得格差 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ミクロデータを活用し、我が国における1990年代から2010年代にかけての世帯内資源配分問題(特に夫妻間での所得、消費、時間の格差)に関する実証研究を行うことにある。具体的には、公益財団法人家計経済研究所『消費生活に関するパネル調査』(1993年~現在)、慶應義塾大学パネルデータ設計・解析センター『慶應義塾家計パネル調査』(2004年~現在)などのミクロデータを用いて、多様化する共働き世帯の実態を捕捉するために、Collective Modelに基づき、世帯内に内在する夫妻間の不平等がどのように推移しているのか検証する。 女性(妻)が就業することによる世帯内の所得源泉の増加は、家計行動にどのような変化をもたらすのか。女性が社会進出し、働きつづけることで、夫妻間の資源配分の不平等が解消されているのかを検証をする。ここでは、調査時点における妻の就業状態のみならず、パネルデータを活用し、過去の妻の就業歴をさかのぼり、結婚や出産などのライフイベント前後において、離転職した女性と就業継続した女性とで、夫妻間の所得格差ならびに資源配分についても考察する。 今年度は、先行研究の整理、上記データを用いての基礎的分析に取り組んだ。1990年代から2010年代にかけて、有配偶世帯における稼得者別の所得の捕捉、ならびにそれが世帯内および世帯間での不平等に与える影響に関する分析を行った。 加えて、パネルデータ特有の問題である、調査期間途中での回答者の脱落に関する問題への対処法として、Bounds Model(Lee(2009), DiNardo et al.(2006))を用いた推計の利用可能性について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究の整理という意味では、稼得者別の所得がそれぞれ世帯間の不平等に対してどの程度影響を与えているかについてまとめた。実証分析では、利用するミクロデータの収集および分析するためのデータセットの構築(利用したい変数の作成)を行うことができ、先行研究を踏まえながら、夫妻の稼得所得の計算プログラムを構築するところまで進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ⅰ)前述した通り、本研究では、調査時点の妻の就業状態のみならず、過去に遡って、ライフイベント前後における職歴(就業継続、離転職)がその後の夫妻間の所得格差、資源配分に与える影響について考察している。ただ現状、調査期間の職歴しか追っていない。今後は、これに加えて、調査開始以前の情報を捕捉し、より多くの対象者の職歴を活用し、分析を試みたい。 ⅱ)平成27年度では、Bargaining Powerの源泉の一つである所得を中心に分析を行ってきたが、これに加えて、この稼得所得の源泉の割合の違いによって、世帯間の資源配分(支出、生活時間)への影響も改めて、検証したい。 ⅲ)最後に、世帯内配分を考慮した等価尺度の推計を行いたい。一般的な不平等度計測では、世帯内の夫妻間配分は平等となっているが、そうでない場合、世帯内における資源配分の不平等を過小評価される。世帯内資源の配分基準となるSharing Ruleの推計、その結果から推計される支出を用いて、貧困率、等価尺度を計算したい。
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