2018 Fiscal Year Annual Research Report
Welfare Analysis of Public Policy by an Overlapping-generations Model with Endogenous Fertility
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15K03514
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岡本 章 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (10294399)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
乃村 能成 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (70274496)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 貧困の連鎖 / 経済格差 / 所得格差 / 所得の不平等 / 世代間での所得の可動性 / 人口減少 / 少子高齢化 / シミュレーション分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本では、近年、親の世代の不平等が子どもの世代に引き継がれる傾向が高まっていると指摘されることが多くなっている。このような状況を踏まえて、世代間での所得階層の固定化の問題について取り扱えるように、「人口内生化世代重複シミュレーションモデル」を拡張した。モデルにおいて親と子の間でのリンクを導入し、外生的に与えられた遷移確率で所得階層間を移動できるようにモデルを拡張し、親と子の間での所得階層の移動が一人当たりの厚生や総人口の水準に与える影響について定量的に分析を行った。 シミュレーション分析の結果、世代間での所得の移動がより活発になった場合には、各年において、総人口に占める(労働効率が高い)高所得層の割合がより高まることにより、国民所得の水準が基準ケースよりも高くなった(逆に、世代間での所得の移動性が低い場合には、出生率の高い低所得層の人口比率が各年において相対的に高まる。)。しかしながら、超長期的には、逆に、国民所得の水準がより低くなった。これは、各年において、総人口に占める(相対的に出生率が高い)低所得層の割合がより低くなることにより、超長期的には、総人口の水準がより小さくなり、国民所得に与えるこのマイナスの効果が、上述の(相対的に生産性の高い)高所得層の人口比率の上昇によるプラスの効果を上回るためである。 また、LSRAによる所得移転を導入して、無限先の将来世代も含めた一人当たりの厚生の変化を計算した。その結果、基準ケース(世代間移転の遷移確率0.3)から世代間での所得階層の移動性が上昇する場合(遷移確率0.5)には一人当たり約22万円に相当する厚生の利得があったが、逆に、移動性が低下する場合(遷移確率0)には一人当たり約29万円に相当する厚生の損失があった。この結果は、世代間での所得階層の移動性を高める政策はパレート改善を達成する望ましい政策であることを示している。
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