2016 Fiscal Year Research-status Report
条件不利地域支援財政政策のソフト事業化が地域の経済力向上に及ぼす効果に関する研究
Project/Area Number |
15K03518
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
川瀬 光義 京都府立大学, 公共政策学部, 教授 (40195095)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 沖縄振興一括交付金 / 再編関連地域特別事業補助金 / 米軍再編交付金 / 電源三法交付金 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、基地所在自治体にかかわる交付金について、本研究の遂行に際して注目すべき2つの施策が行われたため、現地調査は主に沖縄に集中することになった。 重要な施策の第1は、2015年11月に創設された名護市の頭越しに行政区に国が直接交付する「再編関連地域特別事業補助金」について、16年度予算額が前年度比で倍増するなどして本格化し、その使途内容が明確になったことである。その内容は、名護市の既存予算で執行可能なものばかりであった。実は、この補助金の対象となる久辺3区には、米軍再編交付金を財源とした基金事業として2008年度「久辺3区地域コミュニティ事業」が設けられており、基金額は6億円であった。その基金を活用しておこなわれている事業は、新たな補助金の使途とおおむね重複することが明らかになった。国は、法律補助であり自治体を対象とする米軍再編交付金について2009年度から今日まで名護市を不交付にしている。その一方で、予算補助によって政府の方針に異を唱えないことを前提として名護市の頭越しに任意団体へ予算配分するのは思想信条による差別というべきであり、民主主義社会における公的資金の使途の決め方として極めて不適切というほかない。それはまた、民主主義社会における公共政策決定過程に不可欠な言葉による説得を通じて自治体の同意を得る努力を投げ捨てたに等しい。 第2は、沖縄の全ての自治体を対象としたソフト事業に充当可能な沖縄振興一括交付金が開始後6年目にして始めて減額されたことである。減額の最大の理由は、年度内の執行率が低いことにあった。実情を調査すると、制度上可能な翌年度への繰越分を含めると、必ずしも執行率が低いとはいえないことがわかった。ただし、制度発足時の要求額が、各自治体の必要性を積み上げるよりは、過去の実績を根拠にしただけにすぎず過大であったという問題点もあることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料収集と分析作業はおおむね順調にすすんでいる。 とくに基地所在自治体では、研究実績で示した重要な施策に関連して現地調査で貴重な情報を入手することができた。また、沖縄県名護市・読谷村などにおいて、ソフト事業を活用していわゆる6次産業化など、本研究が課題とする地域の経済力向上にむけて一定の成果をあげている事例がみられた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画で示したとおり、対象とする2つの交付金がいずれはなくなることを展望して、それらがなくても地域経済と自治体財政の持続性を維持することは可能であることを示唆する研究成果をまとめることをめざす。
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Causes of Carryover |
現地調査に際して案内をお願いする人に対する謝金の支払い予定していたが、その必要がなかったことが主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画にしたがって、原子力発電所所在自治体、沖縄県内の基地所在自治体などを対象にした補充調査、及び連携研究者との打ち合わせに必要な旅費が中心となる。また、韓国の高麗大学でおこなわれる韓国経済学会、日本地方財政学会など関連学会に参加し、成果の報告および条件不利地域自治体支援政策に関する研究交流をおこなう。
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