2017 Fiscal Year Research-status Report
条件不利地域支援財政政策のソフト事業化が地域の経済力向上に及ぼす効果に関する研究
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15K03518
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
川瀬 光義 京都府立大学, 公共政策学部, 教授 (40195095)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 沖縄振興推進交付金 / 電源三法交付金 / 特別会計に関する法律 |
Outline of Annual Research Achievements |
基地所在自治体・原発所在自治体に対する交付金のうちソフト事業に関わる使途について、次のような知見が得られた。 第1に、沖縄のすべての自治体を対象とするソフト事業に充当可能な沖縄振興推進交付金について、2018年度予算も前年度に続いて大幅な減額となった。ただし、減額の理由については、前年度は執行率の低さが挙げられていたのに対し、18年度については、総額3000億円余を前提に国の直轄事業費などを優先的に確保した結果として減額に至ったと説明されている。こうした国の姿勢は、歳出における自治体の裁量を拡大するという交付金化の趣旨を逸脱していると評価できる。 第2に、沖縄振興推進交付金の使途をみると、「沖縄の特殊性に起因する」という要綱が定めた趣旨にそぐわないと思われる事業が多くをしめている。そうした中にあって、宜野湾市等で将来の基地返還後の跡地利用に備えて公共用地先行取得に活用されて成果を上げている点は高く評価できる。なぜなら、そのような活用方法は、文字通り「沖縄の特殊性に起因する」ものであり、この新たな交付金がなければ画期的な進展が見込めなかったからである。 第3に、原発所在自治体へ電源立地地域対策交付金を交付する手続きとして必要な発電用施設周辺地域整備法に定められた公共施設整備計画が、訪問調査をおこなった静岡県御前崎市において作成されていないことが明らかになった。にもかかわらず交付金が支給されているのは、特別会計に関する法律施行令第51条第1項第8号、第9号による予算補助としてである。したがってその使途は、施設の維持・管理費等に充てられている。つまり、電源三法のうちの発電用施設周辺地域整備法は活用されておらず、原発自治体への交付金について従来のように「電源三法交付金」ではなく、「電源二法交付金」と称するのが実態にかなっているといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料収集と分析作業はおおむね順調にすすんでいる。 とくに原発所在自治体において、交付金の使途が施設整備などハード事業にはほとんど充てられていないことが確認できた。また、基地所在自治体においては、宜野湾市などにおいて将来の基地返還跡地利用に備えた公共用地先行取得に一定の成果を上げていることが確認できた。ただし、返還時期が見通せないために、その成果が本研究が課題とする地域の経済力向上に結びつくかどうかは不確定である。
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Strategy for Future Research Activity |
基地所在自治体における交付金の使途の特徴を、原発自治体の場合と比較しながら検証し、そうした交付金がなくとも地域経済と自治体財政の持続性に支障がないことを示すことを目的として単著『基地と財政』(仮題)を出版することをめざす。
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Causes of Carryover |
韓国経済学会での報告について先方の招待をうけることができたため旅費・滞在費の負担が必要なくなったこと、また原発自治体への調査に際しても勤務先の研究経費を活用できたことが、主な理由である。 単著『基地と財政』を執筆するのに必要な補充調査、成果の発表・交流のための学会等への参加に必要な旅費などに使用する。
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