2015 Fiscal Year Research-status Report
無職女性の就業意欲規定要因の解明および就業促進策の効果に関する計量経済学的分析
Project/Area Number |
15K03519
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
横山 由紀子 兵庫県立大学, 経営学部, 准教授 (80336825)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
車井 浩子 兵庫県立大学, 経営学部, 教授 (70275296)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 女性労働 / 就業意識 / 専業主婦 / 再就職 / 保育 / 待機児童 / 育児休業制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
女性の就業促進策の成功の可否には、女性自身の就業意識が非常に重要な要因となる。そこで、無職女性の就業意欲規定要因を解明するため、育児期の女性を対象としたインターネット調査を実施した。 このインターネット調査の個票を用いた論文として、「専業主婦の再就職希望に関する考察」を執筆した。調査対象の専業主婦のうち、「そのうち働きたい」と考えている人が約7割を占め、就業再開の時期を左右する要因として結婚前のキャリアの蓄積や家計の状況が関係していることがわかった。また、0歳児を持つ母親451人のうち、3年以内に就業を希望する人が278人)で再就職希望者の約7割を占める。こうした母親が実際に働き出すことを促すための支援が重要であることが確認された。さらに、非正規での再就職希望者は末子が3歳頃の再就職を考えており、幼稚園入園の時期を再就職時期として検討していることが窺える。 保育の受け皿の1つとして、こども園に注目した論文は現在投稿中である。地方都市を含む都市部(政令指定都市および中核市)を分析対象とし,認定こども園の類型と地域事情との関係を調べた(2013年現在の状況)。幼保連携型こども園の場合には,待機児童対策としての効果が期待できることが確認できた。幼稚園型こども園については待機児童対策としての効果は期待薄であるものの,幼稚園児の母の就業再開を支援する効果がある。現在では幼稚園入園後に就業を再開しにくい状況にあることを鑑みると,幼稚園型子ども園が果たしうる役割は大きい。今後の方策として、1歳児定員の増加により育休の取得促進で0歳児枠への需要を抑えつつ、2歳児以降はこども園を活用した女性の就業促進策が有効であることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アンケート調査票の設計を行い、その後、調査会社へ委託してインターネット調査を実施した。調査会社の提携インターネット調査パネルを用いたオンライン調査で、平成28年9月8日(火)~16日(水)にかけて実施し、関西圏2府4県に在住する小学生以下の子どもを持つ24-49歳の女性を対象とした。無職女性のみ、あるいは、有職女性のみを対象とすることによるサンプル・セレクション・バイアスを回避するため、無職女性、有職女性それぞれを対象とした2種類のインターネット調査を同時に行った。無業者調査では2,869人、有業者調査では2,483人からの回答を得た。この調査の単純集計はすでに介護職に関する研究課題(15K03520)で作成・公表済みである。さらに状況把握のための論文、「専業主婦の再就職希望に関する考察」を執筆した。 また、現在投稿中の「認定こども園の女性就業支援策としての効果」は、本年度研究予定であった「育児期の休職支援金拡充の政策効果」の分析の切り口を子ども園に変更したものである。当初の目的である女性の就業促進および待機児童解消への方策を論じたもので、育児期の休職支援金拡充の必要性を裏付けるものとなっており、研究活動はほぼ計画通りの成果を挙げているといえる。 なお、研究成果発表の一環として、公務員女性職員対象の研修や高校生対象の進路説明会・模擬授業、自治体審議会等の会議、ラジオ出演等で研究成果を踏まえた情報発信を行ってきた。今後も女性の就業促進に向け研究成果の公表および情報発信を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の予定どおり、以下の研究を進める。 まず、政府統計を用いた研究として、地域性とpeer effectの影響力およびその長期的効果を分析する。国勢調査等の政府統計を用いて、地域におけるpeer effectを分析する。具体的には、離別母子家庭の母の就業行動と各地域の女性就業率との関係性を明らかにすることで、離別女性が就業をためらう理由をpeer effectの観点から分析する。さらに、時系列データを作成することで、子育て期にも就業していることが中高年世代となった時点での労働力・就業状況をどの程度押し上げているかを明らかにする。 次に、平成27年度に実施した独自アンケート調査の個票を用いた分析として、就業状態別でみた「罪悪感」とpeer effectに関する研究を行う。女性の子育て観を就業状態別で分析し、属するグループによる特徴を明らかにする。特に、「罪悪感」や就業行動の理想と現実の違いに対する「挫折感」に焦点をあて、これらが就業意識・就業行動にどのような影響を及ぼすかを明らかにする。 研究が当初計画通りに進まない場合には、平成29年度分析予定である研究テーマを先に分析する。具体的には、2テーマある。1つ目のテーマは「離婚の客観確率の計測および主観的確率との乖離、そして、その要因」である。離婚の客観的計測を人口動態調査を用いて、結婚期間別の離婚確率を計算する。その上で、アンケートで調査した主観的確率との差について、その傾向と要因を分析する。2つ目のテーマは、「夫婦関係の安定性と就業意識・就業行動」である。就業と離婚確率の関係性に着目し、因果関係や影響の大きさを分析するため、夫婦関係の不安や交渉力について分析するとともに、離婚の主観的確率が就業行動にどのような影響を与えるかを分析する。
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Research Products
(1 results)