2016 Fiscal Year Research-status Report
無職女性の就業意欲規定要因の解明および就業促進策の効果に関する計量経済学的分析
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15K03519
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
横山 由紀子 兵庫県立大学, 経営学部, 教授 (80336825)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
車井 浩子 兵庫県立大学, 経営学部, 教授 (70275296)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 女性労働 / 就業意識 / 専業主婦 / 再就職 / 罪悪感 / ピア効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
無職女性の就業意欲規定要因を解明するため、2015年度に実施した育児期の女性を対象としたインターネット調査の個票を用いて分析を行い、2つの論文を執筆した。 (1)就業継続意欲形成の時期とその要因 出産後の就業行動は、現在の状況だけではなく、出産前に形成されていた就業意識によって大きく影響を受けることを明らかにした。無職者の場合には再就職希望者の就業再開の時期や希望する働き方に影響を与えており、就業者の場合には、雇用形態や年収の多寡にも影響を与えていることがわかった。また、女性自身が経済力を持つ必要性を認識することや、仕事が楽しいと思った経験が、「もともと働くつもりだった」として育児期の就業につながることを明らかにした。こうした結果から、女性の就業継続意欲の形成のための方策として2点の具体策を挙げた。1つは、職業選択の時期までに教育現場での啓蒙活動等を通じ、女性自らが経済力を持つ必要性を認識してもらうことである。もう1つは、キャリアの早い段階で、仕事の楽しさ・やりがいを実感できるための方策である (投稿中)。 (2)働く母親の葛藤とピア効果 母親の就業意欲阻害要因としての罪悪感に着目した。多くの母親は働くことについて葛藤を抱えており、時には就業することに罪悪感を覚える。こうした罪悪感をもたらす要因を明らかにしたうえで、周囲の母親の働き方に対する認識によって罪悪感の抱き方がどう影響されるかを明らかにすることを分析目的とした。分析の結果、働く母親が抱く「罪悪感」の要因として、①家族に迷惑をかけている気持ち、②就業することについて夫との関係、③子供が寂しい思いをする、④保護者活動で肩身が狭い、の4点があることを示した。さらに、未就学児の母親が就業することが一般的である状況では、こうした罪悪感は抱かれにくいことを実証的に明らかにした(投稿準備中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の予定は、地域性とpeer effectの影響力およびその長期的効果を分析することにあった。研究の優先度を考慮し、分析テーマを一部変更して研究を実施した。 (1)就業継続意欲形成の時期とその要因:当初の予定は、政府統計を用いて、地域性とpeer effectの影響力およびその長期的効果を分析し、さらに、子育て期にも就業していることが中高年世代となった時点での労働力・就業状況をどの程度押し上げているかを明らかにすることにあった。しかし、アンケート個票データを精査することにより、子育て期の就業を促進するためには出産前の意識が重要で、かつ、長期的効果を有することがわかり、本分析テーマを優先させた。 (2)「罪悪感」とpeer effectに関する研究:当初予定どおり、独自アンケートの個票を用いることで研究を実施した。地域性の継続を説明するにあたり、個人が属するグループの主観的な状況を規範としてとらえた。各個人が抱く「未就学児の母の一般的な就業行動」を規範として、これと異なる行動をとる場合に罪悪感を抱くことを明らかにした。 以上のことから、若干の分析テーマの変更はあったものの、研究活動はおおむね計画通りの成果を挙げているといえる。また、独自アンケート個票および政府統計を用いる予定でいたが、予定外に非常に有益な新たな個票データを入手することができ、現在、データ整備および分析を行っているところである。なお、研究成果発表の一環として、公務員女性職員対象の研修や高校生対象の進路説明会・模擬授業、自治体審議会等の会議、一般市民向け講座等で研究成果を踏まえた情報発信を行ってきた。今後も女性の就業促進に向け研究成果の公表および情報発信を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定では、以下2つの分析テーマで研究を進めることになっていた。すなわち、「離婚の客観確率の計測および主観的確率との乖離、そして、その要因」「夫婦関係の安定性と就業意識・就業行動」の2つである。ただし、昨年度、本研究のテーマである「無職女性の就業意欲規定要因の解明および就業促進策の効果」に関連した非常に有益なデータセットを入手できることとなったため、分析テーマおよび手法を以下のように変更する。 (1)夫婦関係の安定性と就業意識・就業行動:当初予定どおり、独自アンケート調査の個票を用いて、夫婦関係の安定性に対する主観的認識が就業行動や就業意識にどのように影響を与えるかを分析する。離婚確率に関連して、結婚前の妊娠がその後の離婚確率や就業行動に与える影響についても考察する。 (2)無職女性の就業再開に関する研究:新たに入手した個票データを用いて、無職となった女性が実際に再就職し、かつ、経済的に自立することが可能かどうかについて分析行う。当初予定外のテーマであるが、新たなデータの入手により本研究課題の問題意識に対してよりダイレクトに取り組むことが可能となった。 2つのテーマを同時進行させることで、研究が当初計画通りに進まない場合に備える。29年度は最終年度であるため、研究成果の発信や情報提供にも精力的に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
物品購入等において端数がでたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
印刷費や物品費等、研究および成果発表に使用する。
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Research Products
(1 results)