2015 Fiscal Year Research-status Report
介護労働市場における既婚女性の労働力化の促進に関する計量経済学的研究
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15K03520
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
車井 浩子 兵庫県立大学, 経営学部, 教授 (70275296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 由紀子 兵庫県立大学, 経営学部, 准教授 (80336825)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 介護労働 / 女性労働 / 計量経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
介護労働市場における女性労働者の現状について、アンケート調査を行った。2016年度に実施予定の大規模なインターネット調査に向けて、郵送調査法による予備的アンケート調査を実施した。実施に際しては、兵庫県社会福祉協議会の協力を得て、本研究の研究目的に賛同していただける兵庫県内の福祉・介護施設を調査対象とし、各施設で働いている女性労働者にアンケート調査への協力を依頼した。その結果、郵送調査法によりに195通の有効回答を得ることができ(回収率 約73%)、現在分析を行っている。既婚・未婚、子供の有無、育児に関する周りの協力などについて回答を得ており、仕事に関する体力的不安がある一方で、労働力の供給不足により仕事を失うことがないという安心感を得ている等、女性介護労働者の特性が調査結果から明らかになっている。さらに仕事や家庭の不安・不満と個人属性の関係に着目した分析を継続している。 調査対象を兵庫県内に限定することで、地域特性の影響はある程度考慮できている。しかし、研究目的に対する賛同を得られた施設を調査対象としていること、また施設内での回答者の選択方法については各施設によって異なる可能性があることなど、得られた調査結果についてはサンプリングバイアスが生じていることは否めない。調査結果の分析においては、この点に関して十分に考慮して研究を行う。 また、関西圏の女性に対して行われた、仕事と子育てに関するインターネット調査(課題番号15K03519)において、介護労働に関する質問項目を設定した。得られた調査結果から、有業者(介護職従事者、その他の職従事者)、及び無業者(介護職希望者、その他の職希望者)の回答をそれぞれ抽出・集計し、分析中である。 これら2つのアンケート調査の結果を分析・吟味し、2016年度は女性介護労働者に対して大規模なインターネット調査を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度の研究計画にあった女性介護労働者の現状に関する予備的調査については、兵庫県社会福祉協議会の協力により、兵庫県内の介護福祉施設等を中心にアンケート調査を実施することができた。調査方法としては郵送調査法を用い、調査票の設計、郵送作業、入力作業をすべて申請者等が行った。記述式で回答を求める質問項目を設定したこともあり、分析や他の作業においてやや時間を必要としたものの、おおむね予定通り研究を遂行している。 さらに、基盤研究C(課題番号15K03519)における関西圏女性の仕事と子育てに関するインターネット調査において介護職に関する設問項目を設け、上記調査と並行して調査を実施し、分析を行っている。インターネット調査は、9月8日(火)~16日(水)にかけて実施され、関西圏2府4県(滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県)に在住する小学生以下の子どもを持つ24-49歳の女性を対象とした。無業者調査では2,869人、有業者調査では2,483人からの回答を得た。この調査の個票を用いて、介護職に関する項目の単純集計を有業者、無業者それぞれについて作成・公表した。有業者に関しては、介護職に就く女性(97人)とそれ以外の有業女性(2,386人)とを比較し、介護職に就く女性の特徴を捉える資料となった。無業者に関しては、就業する場合の希望職種に介護職を挙げているかどうかで区分し(介護職希望者85人、介護職非希望者2,410人、非就業希望者374人)、介護職への就職を意識している無職女性の仕事観や子育て意識の特徴を捉えた。今後は、この個票を用いてより深い分析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度に実施した兵庫県内の介護・福祉施設における郵送アンケート調査の結果と、関西圏女性に対して行った仕事と子育てに関するインターネット調査の結果を踏まえ、大規模アンケートの設計、実施、及び計量経済学的分析を行う。 郵送による予備的調査の結果から、女性介護労働者は仕事に関する体力面の不安を持つ一方で、職を失うことはないという安心感も得ていることが分かった。このような介護労働者特有の不安や満足感に着目し、労働者の属性の中でも、特に子供の有無、数、年齢、及び生活環境との関係を明らかにする。 同時に、昨年度実施したインターネット調査の個票データの分析を行う。子育て中の女性が介護職をどのように捉えているのか、仕事と家庭の両立については他の職種と違いがあるのか、両立に際してどのようなサポートを周囲から得ているのか、等について、単純集計による比較だけでなく、より高度な計量分析の手法を用いて分析を行うことで、介護職女性の働く状況や両立を可能にする環境を明らかにする。 これらアンケート調査の分析結果を踏まえ、関西圏の女性を対象とした大規模なインターネット調査行う。インターネット調査を利用することで、調査対象を拡大することも可能となり、さらにデータ入力における前年度の課題は改善されると予想される。また、回答の多くがカウントデータとなることから、分析手法の選択において注意を払う。
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Causes of Carryover |
2015年度実施のアンケート調査においては、郵送による予備調査を行った。2016年度に実施を予定としている大規模なインターネット調査にかかる費用を考慮し、アンケート調査に関わるすべての作業を申請者等が行った。また、調査対象を兵庫県内に限定したことで、調査に必要な旅費の執行額が少なくなっている。 さらに、基盤研究C(課題番号15K03519)におけるインターネット調査において介護職に関する設問項目を設けることで、別の母集団からの大量の回答データを得ることが可能であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度はインターネットによるアンケート調査を行う。前年度実施した郵送調査、及び基盤研究C(課題番号15K03519)におけるインターネット調査の結果をもとに、関西圏内の女性を対象としたアンケートを設計、実施する。実施に際しては、リサーチ会社等の業者に委託することで調査を効率的に行う予定で有り、2015年度からの研究費、および2016年度の研究費を委託費用に充てることで大規模な調査が可能になる。さらに、扱うデータが膨大になることが予想され、単純な集計作業などは大学院生に依頼する。 調査結果については、各種研究会等で報告する予定である。
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