2016 Fiscal Year Research-status Report
国際制度比較を通じた低確率・大規模災害に対する最適財政支出量に関する研究
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15K03522
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Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
奥山 忠裕 長崎県立大学, 地域創造学部, 准教授 (20422587)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 防災 / 財政支出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は財政支出に関する実証モデルの考察を行った。財政支出を検討する場合、予算の規模と同時に支出の合理性について説明する必要がある。災害の発生が少ない地域では、より合理性のある説明が求められるだろう。そのため、まず、災害に対する支出の理由を調査し、支出の判断基準と経済主体の行動に関する考察を行った。その一環として災害に対する意識調査を行ったところ、災害対策への意識が高いと同時に災害からの復興に対する関心も高いことが分かった。回答者の属性をみると、震度6以上の地震を経験したことがある(24.1%)、河川の氾濫等による洪水を経験したことがある(7.9%)、大きな台風/雨を経験したことがある(32.1%)、大雪/雪害を経験したことがある(16.3%)、災害による停電などで電気が使えない経験をしたことがある(27.1%)、災害以外による停電などで電気が使えない経験をしたことがある(21.8%)などとなっており、災害を経験した回答者はこれら災害への防災対策とともに、復興に対しても支出する傾向がみられた。他方、復興に反対する意見もあり、既存の復旧事業の効果が十分ではない、復旧事業の効果が信用できない、これ以上税金をとられたくない、他の人が支払うため自分の支払いは必要ないなどの意見が見られた。このことを踏まえ、財政支出の判断基準として、少なくとも反対の人々の意見(効用)を上回る事業内容を提示することが必要と考えられた。今後は、これらの検証をもとに財政支出に関する実証分析モデルおよび地域経済のシミュレーションモデルを考察していくとともに,個人の選好パラメータを統合したモデルの考察を行っていきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シミュレーションのためのデータ収集は終了しており、判断基準等の再考は必要となる可能性はあるもののおおむね順調に推移していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
主に2つのシミュレーションの基本モデルを構築し,本年度で得たデータの数値を分析し、パラメータの値を得ることでシミュレーション分析を行い、防災投資に関する最適な支出量を求める。主な分析項目は次の3点である。第一に、カタストロフリスクのような低確率・大規模災害に対する(リスク・不確実性下の)動学的応用一般均衡モデルを構築したいと考えている。その中で、東海~東南海地震など想定されている大規模地震への経済的被害をシミュレーションし、防災支出の程度を計測したいと考えている。第二に、地震が少ない地域での発生を想定したシミュレーションを行い、不確実性下での防災支出の効果を計測したいと考えている。その中で、あまり対策が必要とされていない地域でも平時からの防災対策が災害時には特に有効に機能することを示したいと考えている。
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