2015 Fiscal Year Research-status Report
医療介護保険制度の将来像に関するシミュレーション分析
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15K03526
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
福井 唯嗣 京都産業大学, 経済学部, 教授 (10351264)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 医療保険 / 介護保険 / 将来推計 / 地域格差 / 財政調整 / 保険給付費 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,以下の2つの方向性で研究を遂行した。 第一は,前年度までに構築されていた地域別×保険者別医療保険財政推計モデルを土台として,そこに地域別介護保険財政の組み込みを行ったことである。具体的には,介護保険制度に関する制度統計を基に,都道府県別×年齢階級別1人当たり介護給付費を推計した上で,現行制度を踏まえて介護保険制度内および医療・介護保険制度間の財政調整等(調整交付金を含めた公費負担分,介護納付金)を算定し,第1号被保険者および各医療保険に加入する第2号被保険者に課されることになる所要保険料を都道府県別×保険者別に算出した。得られた知見は「介護保険財政の都道府県別将来推計」(『京都産業大学論集 社会科学系列』第33号,61-80頁)として公表した。 第二は,「医療・介護総合確保推進法」に基づき策定される都道府県単位の地域医療構想(ビジョン)による方向づけが機能した場合における1人当たり医療給付費の将来の伸び率見通しを地域別将来推計モデルに外挿し,同構想が都道府県レベルおよび全国レベルの医療保険財政に及ぼす効果について推計するための準備作業である。具体的には,現状における医療費の地域差指数(地域の年齢構成の違いを排除した医療費)をベースに,地域差指数の縮小がどの程度の医療保険財政の改善をもたらすかについて定量的に明らかにする。医療の地域差が現状のままの場合の推計も同時に行い,これと比較することで,高齢化進展度の地域差と医療費の地域差のいずれがどの程度将来の各地域・各保険者の医療保険財政を左右するかについて定量的に考察するための準備として,本年度は基盤となるデータベースの構築を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間の研究のうち,初年度の研究計画は,「研究実績の概要」に示したように,予定通り進捗している。 課題1「地域別×制度別医療保険財政長期推計モデルへの介護保険財政の組み込み」については,介護保険制度の第1号被保険者および各医療保険に加入する第2号被保険者に課されることになる所要保険料を都道府県別×保険者別に算出し,「介護保険財政の都道府県別将来推計」(『京都産業大学論集 社会科学系列』第33号,61-80頁)として公表した。 また,課題2「医療費の地域差の将来動向が医療保険財政に及ぼす影響についての考察」については,地域差指数の縮小がどの程度の医療保険財政の改善をもたらすかについて定量的に明らかにするための準備作業として,基盤となるデータベースの構築が完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
3年間に予定している4つの課題のうち,平成28年度は第二課題である「医療費の地域差の将来動向が医療保険財政に及ぼす影響についての考察」の遂行と成果の公表,および,第三課題である「医療・介護保険財政の保険者間の財政調整のあり方についての検討」に向けての準備に充てる予定である。研究計画の変更は当面予定しておらず,さしたる課題も存在しない。
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Causes of Carryover |
当初は本年度末に予定していた,次年度研究執行準備のための資料収集(介護保険制度統計関係資料)を,時間配分の効率性を勘案して次年度初めに計画し直し,年度内は今年度の研究成果のとりまとめを優先的に実施したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度研究執行のために必要となる資料収集(介護保険制度統計関係資料)に充てる。
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