2016 Fiscal Year Research-status Report
人口減少社会における女性の雇用、出産及び子ども・子育て支援政策の検証
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15K03530
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
足立 泰美 甲南大学, 経済学部, 准教授 (80734673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上村 敏之 関西学院大学, 経済学部, 教授 (00328642)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 雇用 / 結婚 / 出産 / 子ども・子育て支援政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
少子高齢化を伴う人口減少が加速化するなかで、安定した財源確保と適正な社会保障給付を目指し、税・社会保障制度の改革が繰り返し行われてきた。しかしながら、将来の制度のあり方を検討するうえで、過去に実施された社会保障体制のなかで財源制約における適切な給付がなされていきたのかを実証することは重要な課題であると考えられながらも、その評価は十分なされているとは言い難い。 一方で、それぞれの自治体が提供する保育・医療・介護などの社会保障給付を受け、税・社会保険料を負担する家計への社会保障制度からの影響は異なる。世年齢や世帯構造などの属性はもちろんであるが、就業行動、消費行動そして貯蓄行動も世帯によって多様である。同一の税・社会保障制度の改革を行ったとしても、家計に与える影響は異なる。このような個人の属性を踏まえて、制度改革の影響を明らかにするには、個票データによる分析で検証を行うことが望ましい。にもかかわらず、個票データによる検証は殆どなされてこなかった。 そこで本研究は、自治体の政策評価と家計の経済行動の2つの視点から検証を行った。第1の視点においては、人口減少に直面している地方自治体の雇用、出産、子ども・子育て支援のあり方について検討し蓄積していた論文を書籍に纏めるに至った(足立(2017))。第2の視点では、雇用・出産・子ども・子育て支援政策が家計の経済行動に与える影響を明らかにするために、匿名データで家計の消費行動をレセプトデータで家計の健康行動に注目して分析を行い論文を執筆し報告を行った。具体的には、2004年度の総務省『全国消費実態調査』の匿名データを使用し、税負担および社会保険料負担に世代間格差が生じていることを明らかにしたり、税制度が労働供給に影響を与えているかどうかについて実証的に検証を行なってきた(足立・上村(2016)、足立(2016))。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アンケートデータの入手ならびにデータセットが迅速に進められたことで当初の計画よりも早い時期に書籍の執筆に着手することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では予備的調査として、2004年度の総務省『全国消費実態調査』の匿名データを使用し、税負担および社会保険料負担に世代間格差が生じていることを明らかにしたり、税制度が労働供給に影響を与えているかどうかについて実証的に検証を行なってきた。しかしながら予備的研究では、2004年度の単年度データの検証に留まっており、年度の影響をコントロールできておらず、変数においても健康情報および介護情報などが欠如している。一方で、近年著しく社会情勢は変化しており、人口構造においても少子高齢化を伴う加速化する人口減少によって、税や社会保険料による財源確保は難しく、社会保障給付は著しく増加し、税・社会保障の制度改革が緊迫の課題である。 そこで、本研究では厚生労働省『国民生活基礎調査(世帯票、健康票、介護票、所得票、貯蓄票)昭和61年から平成27年度まで』の個票データを使用し、1990年代から近年までの動向を対象期間とし、第1に税・社会保障制度における財源と給付の世代間格差に加え世代内格差および保険者間格差が生じていることを示す。第2に、税・社会保障制度改革の有効性を実証分析で明らかにするとともに、最後に実際に制度を変更した場合に、どの程度の影響が生じるのかを擬似的にシミュレーションで検証する。これら推定結果を踏まえて、安定財源の確保と適切な給付の抑制を実現するのに望ましい社会保障の制度設計を提唱することを目的とする。
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Causes of Carryover |
本年度で、第1に、前年度までに執筆してきた税と社会保障関係の複数の論文を英文化し、書籍として纏め、刊行していく予定である。したがって論文を翻訳および校正を行うため研究費を要する。第2に、新たに厚生労働省「国民生活基礎調査」および総務省「就業構造基本調査」「全国消費実態調査」のマイクロデータを使用し、世帯単位で雇用と子育て・介護の関係を実証的に検証していく予定である。本年度はマイクロデータを入手後に、複数年度の項目一覧表の作成および膨大のデータのデータセットを実施するうえで、プログラムに精通した専門家とともに研究を進めるなかでPC環境ならびに人件費が生じてくる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究では、第1に前年度までの学会報告および邦文ジャーナルへの掲載にいった論文を洋書として纏めていくために、各論文の英訳を実施する。第2に、新たに厚生労働省「国民生活基礎調査」および総務省「就業構造基本調査」「全国消費実態調査」のマイクロデータを使用する研究を進めていく。具体的には、目的外申請を行いマイクロデータの入手の手続きを進め、データの入手後は符号表をもとに複数年度の項目一覧表の作成およびデータセットを進めていく予定である。
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Research Products
(18 results)