2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K03534
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
山口 昌樹 山形大学, 人文学部, 教授 (10375313)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | プロジェクトファイナンス / メガバンク / multilevel mixed model |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は国際プロジェクトファイナンス市場における邦銀の貸出行動の特徴と国際競争力を示すことを課題としている。初年度はインフラ需要が旺盛な新興国の中でもタイにおけるプロジェクトファイナンス市場を対象として研究を実施した。邦銀の貸出行動を明らかにするため2009年から2014年に実行された案件、181トランシェから構成される98案件について分析を行った。なお、手法としてmultilevel mixed logit modelを採用したためサンプル数は2,685件である。 基本統計量から当該市場について次のような特徴が確認できた。まず、プロジェクトのタイプとして火力発電と太陽光発電の比率を合わせると90%を超え、発電事業がプロジェクトファイナンスの中心である。調達通貨についてはタイ・バーツが8割を超えており、事前の予想とは異なる特徴を確認できた。融資形態はターム・ローンが8割弱を占めている一方で、保証やVATローンもそれぞれ7%ほどの比率であった。 推計結果から邦銀の貸出行動について次のような特徴が明らかになった。まず、メガバンクは米ドル建て案件に参加する傾向が確認できた。この行動はメガバンクは現地通貨であるタイ・バーツの調達が難しいことから説明できる。次に、融資期間はメガバンクの行動に影響を与えないことが分析結果から示された。この行動は現地銀行とは対照的なものである。現地銀行は融資期間が長い案件に参加する傾向が確認されている。こうした行動の違いは、現地銀行が現地通貨の調達において優位性を有していること、そして、現地のスポンサー企業とのリレーションを考慮していることから説明できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つある研究計画のうちの第1番目である、邦銀のアレンジ案件の特徴を分析することで競争力を明らかにする研究を着実に進めることができた。本研究はSIBR 2015 Hong Kong Conference on Interdisciplinary Business & Economics Research, October 3 rd- 4th, 2015において研究報告を行い、その後、Review of Integrative Business and Economics Research, 5(1)において論文を公刊することができたため上記のように評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
国際プロジェクトファイナンス市場における邦銀の行動についての分析を進めていく。初年度はタイを対象として研究を行ったため、インドネシアを取り上げた分析を行って新興国市場における邦銀の貸出行動の特徴を明らかにしていく。さらに、邦銀にとって有力な市場である先進国、とりわけ米国や英国のプロジェクトファイナンス市場において邦銀がどのように競争力を発揮しているかについても研究を進める。
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Causes of Carryover |
その他に計上されるデータベースについて購入時期が予定よりも遅れたために次年度使用額が生じた。この遅れは納入業者との契約交渉に予想以上に時間がかかってしまったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は研究計画にある通りにデータベースの購入に充当する。
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Research Products
(2 results)