2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K03540
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
関根 順 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (50314399)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 期待効用最大化 / ファクターモデル / BSSファクターモデル / 最適停止問題 / 確率アルゴリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
1)Hilbert空間値を持つファクターモデル(フォワードカーブモデルや遅れを持つ確率遅延微分方程式で記述されるファクターが重要な例である)に関する効用最大化問題の解析を発展させた。特に具体的な最適解表現を持つような具体例の考察をBSS(Brownian Semi Stationary)型ファクターモデルを用いて行った。具体的にはべき型効用最大化問題に関してRiccati Volterra型積分方程式の解を用いた解表現を得た。これは昨年度の研究で考えていた、OU(Ornstein-Uhlenbeck)型ファクターモデルの拡張になっている。
2)最適停止問題の最適停止時刻を記述する自由境界の数値計算を、ドリフトが直接観測できないような拡散過程モデルを用いて部分情報モデルに関して、確率アルゴリズム(Robins-Monroアルゴリズム)を用いて行った。この研究は昨年度より継続しているものである。直接確率微分方程式をオイラー丸山近似してモンテカルロ法を適用する方法と、測度変換を通してBrown運動に関する経路に依存しない評価関数に書き直してガウス型確率変数に関するモンテカルロ法を行う方法と二通りで数値計算を行った。シミュレーションの結果を見る限りでは前者の方がよいという予想と異なる結果を得た。これらは指導した修士課程の学生との共同研究の中で明らかになったものであり、学生の修士論文としてまとめられた(堀川 真伸: 「部分情報下での資産流動化最適時刻の計算について」2017年度大阪大学大学院基礎工学研究科修士論文)。フロアー制約付き効用最大化問題を凸双対法でアプローチする際は、結局双対問題の微分にあたる最適停止問題の解析が重要になるため、これらの研究成果が数値シミュレーションを行う際役立つと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の関心がファクターモデルの発展(特に無限次元ファクターモデルの理論解析や応用に向けた具体例の解析)に傾いてきていることが一因と考えられる。ただしこれは、期待効用最大化問題の研究という意味では同じ傘の下に入るテーマであり、本研究にもファクターモデルの発展から得られた成果がいずれ反映されるものと考えている。最適停止問題の数値解析、数値シミュレーション法の研究に時間を割いていることも一因である。これらに関しては膨大な既存研究があるのだが、最適停止境界(自由境界)や最適停止時刻そのものの解析は一番困難なターゲットという認識であり、その数値計算法についても十分な研究が行われているわけではないという理解である。ただし、フロアー制約付き効用最大化問題を凸双対法でアプローチする際は、結局双対問題の微分にあたる最適停止問題の解析、特に最適停止境界の記述が鍵になるため、これらの数値シミュレーションに関する研究成果も本研究に将来役立つものと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)無限次元ファクターモデルの研究の発展、特にコモディティ・エネルギーデリバティブモデルで重要になるフォワードカーブモデルや遅れを持つファクターモデルの解析は、理論的にも応用上も重要で、かつ本研究テーマともモデリングの観点で関連するものであるので、本研究の副産物として研究を続ける。 2)最適富過程は双対問題の微分にあたる最適停止問題の解を用いて記述されるが、これをexactに計算することは限定的な状況でのみ可能であり、特に状態変数(ファクター)の次元が高い時は大変困難であると考えている。そのため、近似解法の考察がより重要になってくるが、これに対してDavis-Karatzas(1994)、Rogers(2002)等の「最適停止問題に対する双対アプローチ」に関する研究成果を適用することで、sub-optimalな近似的富過程、近似的最適ポートフォリオが計算できるのではとの感触を得ている。この考察を深めたい。
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Causes of Carryover |
本年度もう一つ海外出張を計画していたが、諸事情によりキャンセルとなった。 本研究最終年度にあたる次年度に、よりエフォートを注いで研究を実施することを考えているため。
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