2017 Fiscal Year Research-status Report
アジア・欧米の金融M&Aに対する経営戦略,規制及びガバナンス等による評価
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15K03547
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
白須 洋子 青山学院大学, 経済学部, 教授 (80508218)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | M&A / 外国人投資家 / 買収銀行 / 株主保有割合 |
Outline of Annual Research Achievements |
最初に、アジアの銀行M&Aの長期パフォーマンスと銀行規制の関係について分析し、銀行規制はM&A後の長期パフォーマンス改善に寄与しているとの結論を得、査読付き海外学術誌Finance Research Letters,Vol.24に公表された。 次に、買収銀行の株式所有構造に焦点を当てて実証分析を行った。2000年~2014年のアジアおよびEU諸国の銀行M&Aを対象とした。まず、M&Aの完成確率については、EUでは買収銀行の外国人機関投資家比率が高いと確率が高くなるが、アジアでは逆の結果となる。次に、M&A後の長期パフォーマンスの違いをM&A戦略の観点から、買収銀行の外国人機関投資家のタイプ別(トラディショナル外国人機関投資家・インベストメント外国人機関投資家・ファンド外国人機関投資家)に分析した。結論としては、アジアやEUでは、インベストメント外国人機関投資家とファンド外国人機関投資家によって、M&A後の買収銀行の長期パフォーマンスは全体的に改善される。しかし、トラディショナル外国機関投資家は、NPL削減効果を除くと、ROAの悪化や費用の非効率化を招いてしまう。具体的には、アジアとEUの全タイプの外国機関投資家は不良債権(NPL)の削減に成功している。特にEUでは、TOP10に入るファンド外国人投資家と、買収者と被買収者が同一のファンド投資家の場合、NPLはより一層削減できている。ROAついて、アジアではインベストメント外国人機関投資家はROAを引き上げるが、トラディショナル外国人機関投資家はROAを引き下げてしまう。EUではファンド外国人機関投資家はROAを引き上げる。コスト削減効果について、アジアではファンド外国人機関投資家はコスト削減効果をもたらす。EUではトラディショナル外国人機関投資家はコスト非効率である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね論文は完成されている。しかし、多くの研究者の意見を参考・反映する必要があるので、学会等での発表が残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、2018年5月に金融庁金融研究所の研究会、2018年6月にEuropean Financial anagement Association学会やMultinational Financial Society学会で発表予定である。また、夏以降は、別の学会に応募しており、発表採択されれば、継続的に学会発表及びコメント等を踏まえた修正を行う予定である。最終的には英文雑誌に投稿予定である。
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Causes of Carryover |
2017年度は在外研究期間であったため、落ち着いて考えられる論文作成や分析を重点的に行った。分析等に必要な経費は前年度に既に支出済みであり、当該年度は論文投稿のための準備コストのみがかかった。よって、次年度は、論文を発表するための旅費が必要であり、さらに、昨年度に新たにヒントを得たプラスアルファの研究も追加的に試みるために、データベースの更新コストが必要である。
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