2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K03550
|
Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
永野 護 成蹊大学, 経済学部, 教授 (20508858)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 銀行―企業関係 / ソフトな予算制約 / 国有銀行の民営化 / 銀行民営化と財閥グループ / 銀行民営化と外資系企業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は実証分析におけるデータセットの作成を進め、2000-2014年の新興国企業の銀行借入データ、株式所有比率、日次株価データを作成し、それぞれのデータのマッチング作業を行った。国際基督教大学よりビューロ・バンダイク社のデータ利用についての許諾を得たため、同大学データベースを使用し、データ整理が順調に進捗した。また、銀行側データについては、本プロジェクト実施前年度まで契約していたトムソン・ロイター社の2000-2013年の財務データ、株価データを今年度は暫定的に用い、ビューロ・バンダイク社の借り手企業の主要取引銀行情報から銀行―借り手企業のデータマッチングを行い、推計作業を一部の仮説検証について実施した。 上記のデータセットの作成作業と並行し、本年度は先行研究調査ならびにライプチヒ大学政治経済研究所より、6月、11月にそれぞれギュンター・シュナブル教授、ソフィア・ラトソス研究員を招聘し、講演会を開催した。講演会では、日本をはじめとする東アジアの低金利経済化がもたらす企業金融への影響、経済発展と銀行―企業関係の変容について議論し、東アジアのみならず中東欧諸国との比較分析の観点から議論を行った。 データセットの作成および講演会実施の過程において、新興国の銀行―企業関係に関する実証分析の方針を2点追加することを合わせて検討した。ひとつは、国有銀行―国有企業、財閥銀行―財閥企業関係が、銀行借入のみならず、社債発行の意思決定をも影響を与えている可能性を確認したため、次年度以降実施する実証研究にこれらの分析を含めることとした。また、新興国では東アジア、中東欧などの地域に関わらず、市場経済化と外国企業の誘致、対外開放が同時に進められてきた。こうした点も、外国人所有比率がもたらす銀行―企業関係への影響のひとつの仮説として採用することとした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、初年度はデータセットの整備を中心に進める予定であったが、他大学からの協力を得られたことで、順調にデータ収集・作成が順調に進捗した。また、海外大学との連携は、当初計画には含められていなかったが、2012年度に実施した研究課題24243041「大収縮と地域統合レジーム」での国際ワークショップ開催時に構築した欧州研究機関とのネットワークを活用し、共同講演会を開催、新興国他地域の知見、経験を得ることができた。こうした作業の過程において、新興国の銀行―企業関係が、経済発展と市場経済化の過程で、金融資本市場の深化に直結している状況を確認できたため、これらの先行研究を確認した上で、次年次以降の実証研究に追加的に反映する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の実証研究では、昨年度、暫定的に利用した2000-2013年の銀行財務データ、株価日次データをトムソン・ロイター社データベースを契約することにより更新し、データセットの完成と実証研究の実施、実証結果のとりまとめを進める。また、平成28年度には、6月開催の第18回マレーシア金融学会、11月開催の2016年東アジア経済学会において、昨年度から今年度前半にかけて実施した実証分析結果を報告し、同分野の海外の研究者との間で議論を進めることを計画している。本年度末には、銀行―企業関係に係る研究成果、銀行―企業関係と市場経済化がもたらす金融市場発展の影響に関するワーキングペーパーをとりまとめ、成蹊大学経済学部のディスカッションペーパーとして発刊する。
|
Research Products
(4 results)