2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K03550
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
永野 護 成蹊大学, 経済学部, 教授 (20508858)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 銀行―企業関係 / ソフトな予算制約 / 国有銀行の民営化 / 銀行民営化と財閥グループ / 銀行民営化と外資系企業 / 銀行店舗と本支店間距離 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は平成28年度に作成したデータセットを用い、新興国の銀行―企業関係について実証分析を実施し、3つの国内外の学会で成果を発表した。まず平成28年5月29―30日にマレーシアで開催された第18回Malaysian Finance Associationにおいて、新興国企業の銀行借入、普通社債、イスラム債、の3つの資金調達手段の選択決定要因に関する研究成果を発表した。発表論文は、同学会においてPacific-Basin Finance Journal誌最優秀論文賞、ならびにMalaysian Finance Association最優秀論文賞を同時受賞した。また、9月3~4日に愛媛大学で開催された第10回地域金融コンファレンスにおいて、実証研究成果の発表を行った。研究発表を行った論文は、日本の地方都市における銀行―企業関係について、空間経済学の手法を用い、リレーションシップと店舗展開の関係がもたらす銀行収益への影響に関する実証研究成果をとりまとめた論文を報告している。さらに、11月5-6日にインドネシア・バンドンにおいて開催された第15回East Asian Economic Assocationでは、平成27年度に作成したデータセットの中からASEAN地域の社債発行、イスラム債発行のデータを取り出し、銀行―企業関係と負債選択に関する実証研究成果の発表を行った。平成28年度は、上記の3つの学会で発表した研究成果のうち、2つの研究がEmerging Markets Review誌、Pacific-Basin Financial Journal誌に掲載されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は実証研究が予定通り進捗し、3点の論文として研究成果をとりまとめ、3つの学会で発表することができた。データセットは、今年度もビューロ・バンダイク社より今年度も提供を受け、銀行、借り手企業の株主所有比率をアップデート作業に時間を要したものの、期待通りの成果が得られた。また、2つの研究成果は、2016年末から2017年にかけEmerging Markets Review誌、Pacific-Basin Financial Journal誌の2つの国際学術誌に掲載されたことで、研究成果を国際的に発信することができた。さらに、新興国の銀行―企業関係の先行研究を踏まえ、日本国内の地方都市における銀行リレーションシップの研究へ発展させ、その成果の発表も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、昨年までに進めた研究を更に発展させ、成果を国際的に発信することを目指す。具体的には、新興国の経済発展とともに銀行―企業関係も変化していることを示した上で、借り手企業側の資金調達手段の選択の順序を実証的に確認する。また平成29年度もはこれらの実証研究を進めるとともに、アジア地域の新興国に対し、インフラ投融資を行うアジア開発銀行等との共同研究会を開催し、本研究課題の成果を学術誌のみならず、国際援助機関に対し、政策提言することを目指す。
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Causes of Carryover |
当初計画では、ビューロバンダイク社”OSIRIS”、トムソンロイター社”ThomsonOne"双方のデータを用い、実証研究を進める予定であった。平成28年初めにビューロバンダイク社より提案を受け、同社のデータカバレッジが拡大し、かつては扱っていなかった企業の株主所有比率が入手可能となったとの提案を受けた。今年度も国際基督教大学より同データの提供を受けたため、当初、株主所有比率を入手する予定であったトムソンロイター社のデータを用いる必要がなくなり、採用を見送った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のデータ代替にともない発生した予算は、平成29年度に次の2つの目的に使用する。ひとつは、国際開発機関等への情報発信、政策提言を目的として開催する国際共同研究会の予算として用いる。もう一つは、本研究成果を英国ボルトン大学イスラム金融研究所において発表し、同研究所のM・アデルハック教授、ミドルエセックス大学モリソン講師らとともに、研究成果を更に発展させるための、共同研究実施のための予算として用いる。
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