2016 Fiscal Year Research-status Report
配当と自社株買戻のペイアウト選択に関するモデルの構築
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15K03555
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
森 直哉 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (10364184)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ペイアウト / 配当 / 自社株買戻 / エージェンシー費用 / 税 |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請の段階では1本の論文として提示する予定であったが、昨年春の研究状況報告書(平成27年度)でも記したとおり、2本の論文に分けて成果をまとめることになった。 本研究は、配当と自社株買戻が不完全代替であり、しばしば企業によって併用される現象に関して、従来とは異なるアプローチで理論的根拠を与えようと試みる研究である。論点となっているのは、自社株買戻がエージェンシー費用のみならず税の節約も同時に実現しそうに見受けられるにもかかわらず、なぜ企業が配当を同時に実施するのかである。 学会や研究会での報告を重ねるうち、あるいは、論文を書き進めるうち、企業がなぜ配当を支払うのかを説明する前半部分と、それを前提として、どのような状況下で自社株買戻を組み合わせることが合理的であるかを説明する後半部分は、必ずしも同じ論文で示す必要はなく、それぞれ別の論文に分けたほうが論点を明快にできると考えるようになった。得られる結論、貢献は初期の着想から変わったわけではなく、あくまでも提示の仕方を変えただけであるが、見かけ上は大きな変化となっている。 第1論文は、投資家の異時点間消費選択と取引費用がカギであるため、2時点(現在と消費)のモデルであり、フレームワークは初期の構想どおりである。しかし、そこでは自社株買戻について言及しないこととし、あくまでも配当が支払われる根拠に絞ってモデル化することにした。 第2論文は、自社株買戻のコミットメント効果が配当よりも弱いことを原因として取引費用が高まることがカギであり、1時点のモデルである。この内容を説明するために2時点のモデルである必然性はないというのが初期の構想からの見直しである。そのようにして取引費用が高まるがゆえに投資家は配当を選好することを示唆するが、その具体的な水準を示すところまではモデル化せず、まさにそれを担うのが第1論文という役割を想定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年春の研究状況報告書(平成27年度)では「やや遅れている」と記したが、その遅れは解消できたと認識している。平成28年度に予定していたモデル構築を前倒しすることになったため、既存研究が示した実証的発見の整理作業が後回しになっていたのだが、すでにその作業は終えているし、さらには学会・研究会でのコメントを踏まえてモデルの改良も進んでいる。 前述の第1論文は、すでに英語で書き終えたたため、ちょうど海外の学術雑誌(ジャーナル)への投稿を直前に控えた状況となっている。論点を絞ったにもかかわらず長い論文となったが、論旨展開はスムーズに改良されたので、初期の構想を見直したのは適切な判断だったと思われる。 また、第2論文は、まだ論文の形ではまとまっていないが、学会や研究会での報告で受けたコメントを踏まえてモデルの改良が進んでいる。実証的なインプリケーションを書き下ろすこと、英語で書き上げること、専門の業者を使って英文校正を受けることが残された作業である。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書で記したように、モデルが完成した段階で英語の論文にまとめ、海外のファイナンス分野の学術雑誌(ジャーナル)に投稿する予定であり、2本に分けたうちの片方は実際にその段階に入りつつある。 ただし、過去の経験がそうであったように、かなりインパクト・ファクターが高いジャーナルに対する挑戦から始めるため、最終的に何誌目で受理(アクセプト)されるか、いつ頃までに確定するかは当然に予測不可能であり、いつだってそうであるように、相当の難航が予想される。編集委員会の即決で却下(リジェクト)されることもあれば、編集委員や査読者(レフェリー)から詳細な審査報告書を受けて却下されることもあるし、具体的な改訂要求が出されて継続審査に入ることもある。 前述の第1論文については、論点を絞ったにもかかわらず長めであるから、さらに論点を切り分ける改訂要求が出される可能性も否めない。一方、第2論文については、まだ書き上げてもいないため、そのあたりの可能性も予測しにくい状況である。 以上のことを踏まえて、2本に切り分けた論文のそれぞれにつき、何度かずつ改訂を重ねて投稿を繰り返すことに平成29年度を費やす方針である。
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Causes of Carryover |
予定している2本の論文のうち、片方についてはすでに完成したが、そのように進捗することが年度の途中で予想された。そのため、年度末の時点で英文校正料とジャーナルへの投稿料を優先的に確保できるように、助成金を緊縮気味に使用した。 ところが、英文校正料が予想以上にかかり、かつ、ジャーナルへの投稿料が500ドルから800ドルに値上げされていた。結局、予定している論文投稿のためには残額が不足し、実行を遅らせることになったため残額が生じることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由により、本来であれば平成28年度末に実行できそうだった論文投稿が延期されたため、その投稿料の分におおむね相当する差額が平成29年度の使用額(次年度使用額)で賄われる算段である。 今後、2本の論文につき、海外のジャーナルに積極的に投稿していくため、何度かは改訂要求されたり、審査報告書付きで却下されると予想している。そのつど改訂していくことになり、必要な資料の入手、改訂のたびに要する英文校正、新たな投稿料が発生すると予想される。おおむね当初より平成29年度分として請求していた使用額がこれらの活動に充てられる予定である。
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Research Products
(3 results)