2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K03557
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
佐々木 百合 (長瀧百合) 明治学院大学, 経済学部, 教授 (10272767)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 裕司 滋賀大学, 経済学部, 教授 (40309737)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 経常収支 / 貿易収支 / 為替相場 / HS分類 / 関税データ / パススルー / 所得弾力性 / TVP-VAR |
Outline of Annual Research Achievements |
輸出入価格には、企業物価指数と関税データを用いた単位あたり価格がある。関税データについては、財務省関税局が関税のために税関で調査しているので非常に細かい分類がなされている。質の調整がなされていないため、扱いに注意が必要であるが、マクロ的な動向の裏付けとしてより詳しい産業あるいは製品別、輸出相手国別の情報を得るのには適している。この関税データは、公表されているものの、長期時系列として簡単に使うことができるような形では公表されていないため、まずデータを整備し、特に、HS2桁分類という産業別のデータを作成した。これにより、97産業についての価額、数量、単位あたり価格のデータが使用可能となり、これを用いて為替相場の変化にともなう輸出入価格の変化、数量の変化、所得効果、について分析した。2016年度は2008年の金融危機の前後でこれらの数値が変化しているかどうかに特に注目したが、2017年度は、それらをさらにさまざまな方法で分析した。従来より多く行われているCampa and Goldberg型のパススルー弾力性の推計だけでなく、TVP-VAR(Time Varying Prameter Variance Auto Regression)によるパススルーの変化についても分析した。Campa and Goldberg型のパススルー弾力性の推計については、10年ごとのRolling推計を行い、分析期間中の変化について確認した。 また、比較するためにこれらの分析を企業物価指数の輸出入価格を用いても行った。これにより、過去の実証分析との比較が可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は前年度までに作成したHS2桁データを用いた分析を行った。HS9桁データは非常に細かく詳しいデータだが、マクロ的な全容をとらえるには細かすぎ、数もおおすぎる。そのため、HS2桁データのような大きなくくりのデータを用いることにした。HS2桁データは部分的に財務省HPで発表されているが、限られた地域向けのものしか公表されていない。また、価格の計算方法も、財務省はFisher型で基準年のウェイトを固定して使っているが、本研究では毎年ウェイトを再計算している。 2017年度は、それらをさらにさまざまな方法で分析した。従来より多く行われているCampa and Goldberg型のパススルー弾力性の推計だけでなく、TVP-VAR(Time Varying Prameter Variance Auto Regression)によるパススルーの変化についても分析した。Campa and Goldberg型のパススルー弾力性の推計については、10年ごとのRolling推計を行い、分析期間中の変化について確認した。 また、比較するためにこれらの分析を企業物価指数の輸出入価格を用いても行った。これにより、過去の実証分析との比較が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度にあたり、平成27年度に整備されたデータを大いに利用して、これまでの研究をまとめる予定である。所得弾力性、パススルー弾力性、価格弾力性をこれまでよりさらにいろいろな方法で計測する。輸出関数の推定について特に本プロジェクトが想定している方法に近い方法を用いているものとしては、Chinn(2005)やBussièreet al.(2013)の研究がある。これらの論文は様々な工夫をしながら所得弾力性、パススルー弾力性、価格弾力性を計測しているが、その根底にあるのはいわゆる輸出関数である。例えばChinn(2005)の場合は、輸出の需要関数、供給関数を以下のように考え、輸出関数を導き、それを推定している。本研究における輸出関数は相対価格と外国所得を主要な説明変数と想定し、価格弾力性をはかり、所得弾力性を計測する。その他のコントロール変数(の影響は、定数項によって計測される。さらに上記のモデルに加えて、本研究では、為替レートが価格変化に与える影響も考慮するため、パススルー弾力性を求めるためのパススルー関数も計測する。この方法により、為替レートが変化したときの価格改訂の程度を知ることができ、第二段階として、変化した価格が輸出にいかなる影響を与えるのかについて考えることができる。 今年度は、発表活動も行い、意見を反映して論文を修正していく作業もすすめる。
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Causes of Carryover |
統計ソフトの更新状況から購入時期を遅らせたため。 研究の進展状況から、3月に発表予定だった学会への参加をやめて、8月の学会に変更したため。
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