2015 Fiscal Year Research-status Report
中国近代企業の発展への社会主義経済制度の影響に関する事例比較研究
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15K03570
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
加島 潤 横浜国立大学, 国際社会科学研究院, 准教授 (50463899)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 経済史 / 中国史 / 近現代史 / 企業 / 社会主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中国の経済発展の原動力であった近代企業の長期的な発展過程を解明することを目的とする。とりわけ、近代企業の勃興期である中華民国期(1912-49年)から中華人民共和国成立後の計画経済期(1949-78年)、そしてその後の改革開放期に至る時期を対象とし、計画経済期に導入された社会主義経済制度が企業の発展に与えた影響について注目しつつ、複数の産業分野の企業のケーススタディーと比較分析を行う。 研究計画の初年度にあたる平成27年度には、本研究にとって必要不可欠である企業関係資料の収集とその吟味、および適切な企業・産業のケース選定の基礎作業を行った。本研究では、中国国内において産業分野や規模の異なる企業を複数選択し、その長期にわたる企業形態・経営構造・生産体制・財務構造などを相互比較する方法を採るため、適切なケースの選定が極めて重要な意味を持つ。 また、平成27年8月に京都で開催された第17回World Economic History Congressにて“Chinese Enterprises under the Socialist Economic System in Comparative Perspective”と題するパネルセッションを組織し、本研究の基礎となるアイデアを含んだ研究報告“Chinese Enterprises under the Planned Economy: A Case Study of Cement Industry in Shanghai”を行った。同セッションには、国内外の中国経済史・経営史の若手研究者が共同組織者として参画し、事前準備や当日の議論を通じて本研究の課題の重要性を再確認するとともに、今後の研究の方向性を考える上で重要な示唆が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に実施した研究の進捗状況は、基本的に順調であると言える。特に、当初予定していた企業関係資料の収集とその吟味、および適切な企業・産業のケースの選定作業を進められたこと、また、第17回World Economic History Congressでのパネルセッション組織と研究報告を成功裏に行うことができたことは、全体の研究計画から見て十分な成果であったと思われる。 にもかかわらず、評価区分を「おおむね順調に進展している」とした理由は、当初予定していた中国での一次史料調査を行わなかったことによる。本研究においては、より立ち入った企業のケース分析のために現地での一次史料調査が不可欠であるが、現在の研究状況から総合的に判断して調査を平成28年度以降に持ち越すこととした。これにより、当初予定より研究の進捗が若干遅れることとなったが、実質的には次年度以降により効率的に研究を進めるための戦略的な変更である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、複数の産業分野の企業を事例として取り上げ、それぞれを通時的に分析・比較することで、中国近代企業の発展過程を明らかにすることにある。具体的には研究期間内に以下の4つのプロセスにより考察を進め、企業形態・経営構造・生産体制・財務構造などに注目して企業をいくつかのタイプに分類し、比較・検討を行うことを想定している。 1、企業および産業に関連する文献資料による検討(企業関係刊行資料等)。2、モデルとなる産業および企業の選定(候補:鉄鋼業、紡織業など)。3、企業および産業に関連する現地一次史料の調査・分析(現地文書館での調査等)。4、1から3のプロセスで得られた複数の企業に対する検討結果の比較分析。 初年度にあたる平成27年度には、このうちの1および2の段階に重点を置いた。平成28年度以降は、この1と2の作業をより一層進めつつ、その作業を通じて候補として浮かび上がった企業および産業に焦点を合わせて3の現地一次史料調査を行っていく。 また、平成30年度にMassachusetts Institute of Technology(Boston, USA)で開催予定の第18回World Economic History Congressにおいて本研究の最終的な成果を発表すべく、パネルセッションを組織し研究報告を行う予定であり、現在国内外の共同組織者と連携しセッションの申請準備を進めている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、研究遂行上の都合から、平成27年度に予定していた中国での現地資料調査を行わず、平成28年度以降に持ち越したことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度において、中国での現地資料調査に関する旅費等に利用する予定である。
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Research Products
(2 results)