2016 Fiscal Year Research-status Report
中国近代企業の発展への社会主義経済制度の影響に関する事例比較研究
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15K03570
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
加島 潤 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (50463899)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 経済史 / 中国史 / 近現代史 / 企業 / 社会主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画の第2年度にあたる平成28年度においては、平成27年度に引き続き、企業関係資料の収集とその分析に重点を置くと同時に、最終成果の発表について初歩的な準備を進めた。 企業関係資料の収集およびその吟味については、古書店などを通じて企業関係の刊行資料の購入・収集を行うと同時に、現地調査として、平成29年3月26日から29日にかけて香港の香港中文大学中国研究服務中心(Universities Service Centre for China Studies)を訪問した。同センターは、現代中国に関する資料を系統的に収集している著名な研究機関であり、中国企業史関係資料に関する系統的な調査を行うことができた。また、平成28年5月20日に開催された大阪産業大学梅田キャンパスでのワークショップ「現代中国の経済発展」に参加し、発表された研究報告から研究上の着想に関わる知見を得た。 成果発表のための準備としては、Robert Cliver (Humboldt State University)、Juanjuan Peng (Georgia Southern University)、Carles Braso Broggi (Universitat Oberta de Catalunya)などの中国経済史・経営史の若手研究者と連携しつつ、平成28年5月に、第18回World Economic History Congress(MIT, Boston, USA, 平成30年7月29日から8月3日に開催予定)に向けたパネルセッション”Institutional change and Chinese enterprises in historical perspective: 1940s-1970s”を組織者として申請した。結果は残念ながら落選であったが、セッション企画を再検討し、平成29年6月末締め切りの第2ラウンド募集に再申請する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究の進捗状況は、基本的に順調である。特に、平成27年度には実施できなかった現地調査を行うことができたこと、当初予定していた企業関係資料の収集と吟味を進めることができたことは、全体の研究計画の進行から見て重要な成果であったと言える。 評価区分を「おおむね順調に進展している」とした理由は、現地調査を政府文書館での一次史料調査の形で行うことができなかったこと、第18回World Economic History Congressに向けたパネルセッション申請が落選となったことによる。前者については、訪問予定であった文書館の史料公開状況を踏まえて総合的に判断した結果であるが、香港中文大学中国研究服務中心での調査に切り替えたことで、刊行資料を通じた研究の方向性について新たな着想を得ることができた。また。後者については、パネルセッション申請の過程を通じて国内外の連携する研究者と緊密に意見交換を行い、また組織委員会より申請内容の修正に向けたコメントを得ることができたため、セッションの企画および研究内容を練り直す機会として、前向きに捉えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、中国近代企業の発展過程を明らかにすべく、複数の産業分野の企業を事例として取り上げ、それぞれを通時的に分析・比較することに主眼を置いている。具体的には、研究期間内に以下の4つのプロセスにより考察を進め、企業形態・経営構造・生産体制・財務構造などに注目して企業をいくつかのタイプに分類し、比較・検討を行うことを想定している。 1、企業および産業に関連する文献資料による検討(企業関係刊行資料等)。2、モデルとなる産業および企業の選定(候補:鉄鋼業、紡織業など)。3、企業および産業に関連する現地一次史料の調査・分析(現地文書館での調査等)。4、1から3のプロセスで得られた複数の企業に対する検討結果の比較分析。 本研究も、第2年度が終了し、このうちの1および2の作業を一定程度進めることができた。平成29年度以降は、現地一次史料調査の実施を中心として主に3と4の作業に重点を置くが、現地での史料公開の状況により調査の効率が想定以上に低くなる場合は、刊行資料中心の研究に切り替えることも視野に入れている。 また、平成30年度に開催予定の第18回World Economic History Congressにおいて本研究の成果を発表すべく、国内外の共同組織者と連携しつつパネルセッションの再申請(平成29年6月末予定)の準備を進める。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、研究遂行上の都合から、平成28年度に予定していた中国国内での現地資料調査を行わず、香港での現地調査に切り替えたことなどによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度において、中国での現地資料調査に関する旅費や必要な機器・資料の購入などに利用する予定である。
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