2015 Fiscal Year Research-status Report

理工系教育の比較経済史―フランス型教育と途上国教育の国際標準化と危機

Research Project

Project/Area Number	15K03572
Research Institution	Shizuoka University
Principal Investigator	松田紀子静岡大学, 国際交流センター, 教授 (80432201)
Project Period (FY)	2015-04-01 – 2018-03-31
Keywords	教育 / 高等教育 / 国際化 / フランス / 欧州圏 / 植民地 / 経済史
Outline of Annual Research Achievements	経済と教育の間には相互連動と摩擦抵抗の歴史があり、近代技術教育は工業化により誕生したがサービス産業化の今日では「理工系教育の危機」が叫ばれ、他方、経済統合に比べて教育制度の統合は進まず経済と教育の変化は連動しても一致しない。本研究では、グローバル時代の大学を考える好例として、東西では欧州圏、南北では旧仏植民地にまたがる、「フランス型」理工系教育を参照軸に、その近現代史を各国比較する。技術教育がどこまで標準化しどこまで地域の固有性を維持するかを比較することで、国際標準化への対応と地域の経済・社会が持つ特性とをいかに均衡させるか（これは、日本の高等教育にも共通する切実なジレンマと考えられる）を検討する手がかりとすることを意図している。初年度である平成２７年度は、次年度以降の分析の基盤構築を行った。すなわち、まず、理工系教育を含むフランスの高等教育の現状について、国内のワークショップに参加し最新の情報を得るとともに、パリ政治学院他の図書館所蔵文献・資料により二次文献の収集を行った。また、旧仏領における高等教育機関の形成についての資料を、フランス国立文書館海外文書分館（フランス・エクサンプロヴァンス）所蔵の希少な同時代文献に求めた。その結果、特に前者については、欧州圏の教育・訓練における統合プロジェクトの進行とともにフランスの高等教育が直面している、課題や変化の具体的な状況について把握することができた。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason 当初計画および平成２７年度の計画に挙げた諸項目は年度内に着手し、一定の成果を産み出したと考えられるため、おおむね順調と判断した。研究課題の基盤となるフランス高等教育の現状分析や旧仏植民地の史料収集については、当該年度にフランス高等教育をテーマにしたワークショップの国内開催への参加や、研究代表者のこれまでの研究蓄積を通じたフランス現地における情報・資料の所在の把握などにより、お概ね順調に進んでいる。ただし、当該年度の前年来フランスでは非常事態宣言が継続されており、海外現地調査については、危機管理の観点から従来以上に慎重に進めている。
Strategy for Future Research Activity	平成２８年度以降も、おおむね当初計画通りに進める。初年度に実施したフランス高等教育の現状分析や旧仏植民地の史料収集を基盤として、ひきつづき、フランス語圏およびヨーロッパ諸国の技術教育史および高等教育史関係の図書・資料、また比較としての日本の高等教育関係の文献のさらなる収集を進める。あわせて、現地調査については、対象をフランスからイギリス・ヨーロッパ・アフリカ等に対象を広げ、理工系教育機関のほか業界団体・商工会議所などを訪問して、史料収集や現地インタビューの実現を目指す。ただし、危機管理の観点から慎重に現地調査先を選択する。